DSCR(Debt Service Coverage Ratio、元利金返済カバー率)は、不動産が生み出す収益で元利金返済をどれだけ賄えるかを示す指標です。賃貸不動産の事業性融資・収益物件向け融資で、与信判断とモニタリングの両面で活用される基本KPIです。本記事ではDSCRの計算方法と、実務での見方を整理します。
DSCRとは
DSCRは 純営業利益(NOI)÷ 元利金返済額 で計算されます。たとえば賃貸不動産のNOIが年間1,200万円、元利金返済額が年間1,000万円の場合、DSCR = 1,200万 ÷ 1,000万 = 1.20 となります。1.0を上回っていれば、収益で返済を賄える状態を示します。
NOI(純営業利益)の算出
NOIは、賃料収入から運営費(管理費・修繕費・固定資産税等)を差し引いた純利益で、減価償却前・支払利息控除前の数値を使うのが一般的です。空室損失・滞納損失も控除し、保守的な実態に近いキャッシュフローを反映させます。
DSCRの基準水準
1.0未満
収益だけでは元利金返済を賄えない状態。融資継続には他収入・追加担保・経営改善計画が必要です。
1.0〜1.2
カバー余地が薄い水準。市場変動・空室増・修繕費増などで容易に悪化するため、注意モニタリングが求められます。
1.2〜1.5
標準的な水準。多くの収益不動産向け融資はこのレンジで設計されます。
1.5以上
余裕のある水準。保守的な与信枠の活用余地があり、優良案件として位置付けられます。
DSCR計算の留意点
賃料の現実性
満室想定の賃料を使うと、空室リスクを反映できません。実勢の稼働率(95%等)を反映した実効賃料で計算するのが安全です。
運営費の網羅性
管理費・修繕費・公租公課・損害保険料・空室損失・滞納損失など、運営に直接かかる費用を漏れなく計上します。減価償却・支払利息は通常NOIには含めません。
金利変動の影響
変動金利融資では、金利上昇により返済額が増えDSCRが悪化します。ストレスシナリオでのDSCRも併せて試算します。
LTVとの組み合わせ
LTVが「担保で守られているか」を示すのに対し、DSCRは「キャッシュフローで返せるか」を示します。両指標を組み合わせることで、与信判断の解像度が高まります。
- LTV低・DSCR高:優良案件。融資条件の差別化材料に。
- LTV高・DSCR低:回収リスクが大きい。追加担保・保証人で補完を検討。
- LTV低・DSCR低:担保はあるが収益性が弱い。事業性評価で補完。
- LTV高・DSCR高:キャッシュフロー良好だが担保余力が薄い。賃料下落シナリオでの再評価が重要。
DSCRの継続モニタリング
DSCRは融資実行後の継続管理でも重要な指標です。年次の決算書・賃貸借契約書・修繕履歴をもとに、定期的に再計算し、悪化傾向があれば早期に介入することで、回収リスクを最小化できます。





