TRUSTART
CASE STUDY

肥後銀行

激動の熊本で地域課題の解決に向けた支援体制を強化。肥後銀行「都市開発・街づくり支援室」が推進する不動産データ活用

R.E.DATA金融機関3,000名以上
肥後銀行

導入背景

世界最大の半導体受託製造企業 TSMC が熊本進出。

そして、それに呼応するように加速するインフラ整備と再開発が同時多発的に進むなか、肥後銀行は地域課題の解決と新たな事業機会の創出を目的に「都市開発・街づくり支援室」を立ち上げました。

しかし、現場が直面していたのは、各所に点在する不動産データと手作業による非効率という「アナログの壁」。

本記事では、同室がその壁を突破するためのパートナーとして TRUSTART(トラスタート)を選定し、いかにしてデータドリブンな支援体制へと舵を切ったのか――官民の実務経験を持つ 5 名の方々へのインタビューを通じて、現在の取り組みについてお話を伺いました。

ご支援内容

広大なエリアの登記簿の新規取得と、過去の膨大なデータを最新の状態に洗い直す(データクレンジング)作業

ご支援前の状況

  • 情報の散在:支店ごとに個別で謄本を取得しており、取得状況が虫食い状態。また、数年前に取得した謄本もあり、最新の所有者情報ではない可能性があった
  • 物理的・心理的ハードル:数百筆単位の登記調査は時間も労力も大きいため、現場では実行をためらう傾向があった

プロジェクトのサマリー

  • データ提供:熊本県内の広域な不動産登記情報の網羅的な取得とデータ化
  • データクレンジング:過去に肥後銀行が取得した不動産登記情報の整理
  • 活用コンサルティング:銀行特有のシステム環境や組織体制に合わせた、スモールスタートからの実践的なデータ運用提案

官民の垣根を越えて集結した5人と「都市開発・街づくり支援室」のミッション

―― 本日はよろしくお願いいたします。まずは皆様の自己紹介をお聞かせください。

上野

室長として、当行の不動産ソリューション全体の統括をしています。私たちの最大の目的は『意志ある未来を創造する』ため、地域・産業・金融をつなぐ中核機能となることです。そのために、熊本県内の不動産データをいち早く集め、プロジェクト初期の構想段階から銀行として何が関与できるかを探り、具体的な形にしていくのが使命だと考えています。

今年は熊本地震から10年、そして昨年は肥後銀行設立100年という大きな節目を迎えるタイミングでもあります。この節目にあたって、先輩たちが築き上げてきたノウハウを確実に次の世代へとつなぎながらも、旧態依然としたやり方を根本から変えていかなければならないという使命感を抱いています。そこで、そのスタートラインとして、この最高のメンバーを集めました。

上野 尚文様
上野 尚文様/マーケティング部 都市開発・街づくり支援室長

木櫛

私は今年の3月まで熊本市役所に勤めておりました。全庁的な政策の企画立案や調整を担う部門の局長を最後に退職し、4月から当行に加わりました。

行政から銀行に来て強く感じたのは「目指すゴールは同じだ」ということです。住民の皆様の幸せ、すなわちウェルビーイングの実現ですね。

行政だけでは解決できない長期的なまちづくりの課題に対し、銀行という立場で、民間の皆様と力を合わせて関わっていけることに非常にワクワクしています。

木櫛 謙治様
木櫛 謙治様/マーケティング部 理事

田代

私は今の部署に来る前の2年間、地元の不動産会社様に出向しておりました。事業用不動産の開発に特に強い会社でしたので、その実務ノウハウを学ばせていただいた形です。

この室では「推進役」として、実践的なことを一通りやる担当です。民間とのパイプ役となり、具体的な案件の組成からクロージングまで、実務のすべてを担っていきます。地元に本当の意味で貢献できる組織にしたいですね。

田代 茂樹様
田代 茂樹様/マーケティング部 都市開発・街づくり支援室 推進役

今村

私は以前、当行で唯一の不動産専任としてビジネスマッチングを担当してきました。

私のミッションは、これまで一部の人間しか分からなかった不動産データの「属人化」を打破すること。まちが変わっていくことに携わるのは、本来すごく楽しいし、ワクワクすることなんです。

その感情を若い世代に繋ぎ、行員たちが「自分の仕事で熊本が良くなっている」と胸を張れる土台を、このチームで作っていきたいと思っています。

今村 孝史様
今村 孝史様/マーケティング部 都市開発・街づくり支援室 副推進役

平野

私は銀行内で主に市町村を担当する部署で、官民連携(PFI)などを担当し、公共主導の開発案件に携わることが多かったため、今回のチーム組成にあたって声をかけていただきました。

公共の案件は重たくて足が長いものが多いのですが、だからこそ私たちが専任として介入する価値があります。

木櫛と私が「公共」、田代と今村が「民間」を強みに持ちつつ、将来的には「全員がすべての領域をカバーする」というところを目指しています。

平野 貴庸様
平野 貴庸様/マーケティング部 都市開発・街づくり支援室 推進役代理

「一生に一度の打席」11兆円の波が押し寄せる熊本の現在地

―― 現在、熊本では TSMC の進出を契機に、県内が大きく変わろうとしていると思います。この巨大な波を、どう捉えていますか。

上野

県内、特に産業集積が進むエリアでは、大規模な都市開発プロジェクトが同時多発的に進んでおり、県内不動産の動きは、大規模化、複雑化、長期化しており、「不動産情報の組織横断的な集約」、それから「統括的なマネジメントの実践」が急務となっています。

具体的には、中九州横断道路や西環状線といった交通インフラの整備が加速しており、道路ができることで周辺エリアの再開発も進みます。また、熊本市と官民連携で進めている「まちなか再生プロジェクト」も、大きな柱のひとつです。県内全域で私たちが把握しているだけでも、中〜大規模な事案で、200件以上が動いている状況です。

九州フィナンシャルグループが算出した経済波及効果によると、2022年から10年間で「約11兆円」にのぼるとされていますが、これは日本中どこを探しても珍しい、凄まじい規模の変化でしょう。

―― 時間軸で見れば10年のうち4年が過ぎ、中盤に差し掛かっています。現在の状況としてはどのように感じていますか。

上野

目に見える形としては TSMC の第1工場が稼働したばかりで、第2工場はまだ建設の道半ばです。産業集積エリア以外も含め、県内全域で進行中のプロジェクトを具体化できているレベル感で言えば、構想レベルの事案も多く、まだまだこれから本格化していく、というのが私の正直な感覚です。

木櫛

行政の立場で長く熊本を見てきましたが、今このタイミングで打つべき一手一手が、熊本の次の100年を左右すると確信しています。熊本市役所の移転や跡地利活用といった、まちの形を根本から変えるような巨大な案件がいくつも動いています。

まちが元気になることは、そこに住む人たちの幸せに直結しますが、どんなに立派な理想を掲げても、まちに住む人々や現場のリアルなニーズやデータが伴わなければ、空論で終わってしまう。理想を空論で終わらせないための挑戦が、いよいよ本格化するタイミングだと感じています。

平野

私たちにとっては「一生に一度の打席」かもしれません。このチャンスを逃せば、二度とこの規模のまちづくりに携わる機会は得られないでしょう。

だからこそ、私たちが率先して動くことで、次の世代に誇れるような熊本の新しい景色を創り出していく。そんな、地域の未来の分岐点となるような仕事を、このチームで成し遂げたいですね。

平野 貴庸様

膨大な不動産データの点在。現場の「スピード」と「機会」を奪うアナログの壁

―― 御行の不動産ソリューションについてリードしていく皆様にお聞きしますが、以前は不動産データの収集や活用においてどのような壁にぶつかっていたのでしょうか。

上野

最大の問題は「不動産データの点在」でした。本部や営業店に膨大な情報はあっても、それらを統括する機能が全く存在しなかった。「最新の情報」なのか「過去の情報」なのかすら判別できず、フォーマットもバラバラでどれが最新なのか分からない。まずはこれらを一元管理できるシステムとして「営業資産」に昇華させなければならないという想いがありました。

田代

私は現場のミクロな視点からお話しします。不動産開発において最優先なのは、情報収集のスピードです。出向先の不動産会社が使っていたシステムは、クリックするだけでバッと必要なデータが出てくるほど、とても速かったんです。

一方で、銀行はデータ取得に相当な時間がかかっていました。あらゆる機密情報を守るためにファイアウォールなどの制約があるのは仕方ないにせよ、従来のスピード感にはもどかしさがありました。

平野

私は規模感への心理的負担を強く感じていました。

とくに公共の案件は規模が非常に大きく、例えば「100筆の登記情報を取ろう」と言われたら、多くの人はまず、それらにかかる膨大な手間を想像すると思います。結果的に、手間がかからない、規模感の小さい発想に陥るのではないかと考えていました。

こうした心理的負担を何らかの方法で解決できないかなと課題感を持っていました。

今村

以前、私がいた部署には、肥後銀行の全店から日々膨大な不動産情報が集まってきました。それらをひとつひとつ手作業でエクセルに打ち込みながら、自ら足を使って地元の不動産業者さんを一軒一軒回り、泥臭く集めてきた生の情報も、同じように手入力で入力していたんです。

しかし、どれだけ時間をかけて打ち込んでも、情報は日々変化し、過去の貴重なデータは膨大な情報の海へと埋もれていってしまう。

この現状を何とかシステム化して効率化させたいと、2年前には外部ベンダーさんと連携して行内の CRM をリンクさせる開発を検討しました。しかし当時は、実現するためのコストが高すぎるため断念せざるを得ませんでした。

今村 孝史様

予算獲得の壁と、TRUSTART をパートナーに選んだ理由

―― 長年のアナログな課題を解決するためのパートナーとして、TRUSTART(トラスタート)を選んだ決め手は何だったのでしょうか。

上野

決め手は、単なるシステムやデータ提供だけではなく、データ活用の目的設計から実行・分析まで全行程で柔軟にサポートしてくれる姿勢に共感したからです。

また、TRUSTART さんは信託銀行からスピンアウトした経緯もあり、私たち金融機関特有の悩みや、既存システムとの兼ね合いをよく理解してくださっている印象を受けました。

さらに極めつけとしては、熊本出身の経営陣をはじめ、TRUSTART の皆様が地域の課題を決して他人事ではなく「自分ごと」として捉え、「熊本の未来を共に創る」という志を心から共有できる相手だと直感したんです。

―― 導入にあたって、当初の社内調整に苦労されたとお聞きしました。

上野

本部経験がほとんどない中で、システム開発予算の承認を得るのがこんなに難しいのかと痛感しました。既存の社内業務システムとバッティングしないよう、複雑に絡み合ったり重複しているシステムの全貌を理解するところからのスタートで、さらには最新のツールについても多くのベンダーさんや行内外の詳しい人に聞いて回りました。

自分としては準備万端で予算編成会議に臨んでプレゼンをするわけですが、なかなか承認を得られず、本当に苦労しました。システムに詳しい方に「API でできないのか」と問われたり、「グループ全体の最適解としての審議事項なのか」と指摘され、答えに窮し、「最適化につなげるための一歩目として協議させて頂いています!」と反論しましたが、結局再審議となりました(笑)

営業現場で、渉外一筋でやってきた自分の無知さ、本部でのシステム面の予算獲得に向けた事前の根回しや事前学習不足を含め、自分の実力不足を痛感しました。しかし、ここで自分が立ち止まると、熊本に訪れた千載一遇の機会があるのに逃してしまう。そんな焦燥感を持ちながら次の準備を進めているときに、TRUSTART さんが「まずは最短でできることから進めましょう」とアドバイスをくれました。

「既存システムと干渉しない範囲で、実務に即したデータ活用の土台を作る」という目標を置いたのをきっかけに、3回目のプレゼンでようやく予算の承認を得られました。

上野 尚文様

膨大な調査作業からの解放。最新のテクノロジーによる現場のパラダイムシフト

―― TRUSTART が最初にご一緒させていただいたお取り組みについての率直なご感想をお聞かせください。

上野

広大なエリアの登記簿の新規取得と、過去の膨大なデータを最新の状態に洗い直す(データクレンジング)作業についてご依頼させていただきましたが、行内のメンバーで実施していたら、膨大な時間と労力がかかっていたはずです。

それが圧倒的なスピードで納品いただいたので、現場の担当者からも「すぐに次のアクションに進める」と大変感謝されました。

田代

既存のシステムだと、何筆か登記簿を取得するだけなら問題ないのですが、広範囲の取得となると、「どうやって調べればいいのか」という現場からの相談が後を絶ちません。

今村

私が現場で外回りしていたときは、複数の地図を見て地番を調べたり、法務局に行って情報を取りに行ったりとひとつひとつ調べるのにすごく時間がかかっていました。それが TRUSTART さんのシステムのデモを見せてもらったときに、「ウェブ地図で範囲を囲むだけで登記簿が取れるんです」と一瞬で完了してしまうことに衝撃を受けましたね。

R.E.DATA(リデータ)の画面

―― 業務の効率化にとどまらず、現場の行員の皆様の意識や働き方にもポジティブな影響をもたらしそうですね。

平野

まさにこれから現場の方々に「そんなこともできるんだ」ということを、私たちが率先して広めていかなければならないタイミングだと思っています。

現場からの相談事をキャッチアップするとともに、不動産データ活用のマニュアルなどを作成して、若手の皆様にも成功体験を積む機会を増やしていきたいですね。

「その地域にどのような地銀があるかでその地域の未来は変わる」100年の歴史を越え、次世代へ繋ぐバトン

―― 最後に、これから皆様が未来に描く「最高の熊本」と、それぞれの決意をお聞かせください。

木櫛

行政にいた人間として、改めて確信しているのが、行政も銀行も、地域を盛り上げ、住民の皆さんの幸せを願う想いは全く同じということ。

市役所の職員も肥後銀行の行員も、まちが元気になればそれが自分の幸せややりがいに繋がっていく。その「手段」が少し違うだけなんです。

行政だけでは進まない課題を、不動産というテーマで、民間のスピード感を持って動かしていく。この化学反応こそが、熊本をより豊かにしていく原動力になると信じています。

田代

出向中に強く感じたのは、銀行が提供できる価値の「広がり」です。自己資金が豊富な企業様にとって、従来の融資という切り口だけでは、我々が新たなパートナーとして深く介在するきっかけを掴むのは容易ではありません。しかし、そこに「不動産」という確固たる武器が加わることで、経営層の方々と直接、まちの未来を左右するような高度な戦略を対等に語り合うことが可能になります。

ただ、企業様がどれほど壮大なまちづくりのビジョンを描いても、いざ熊本で形にするとなれば「許認可」や「複雑な規制」、さらには「地域との合意形成」といった地域特有の高い壁が必ず立ちはだかります。ここをクリアできなければ、どんな計画も絵に描いた餅で終わってしまう。

だからこそ、我々が現場で培ってきた不動産の実務能力と、銀行ならではの強固な資金力・安定感を融合させ、プロジェクトの完遂まで伴走する。それこそが、地域において「選ばれ続ける地銀」としての新たな存在意義の証明であり、この組織で挑む最大の醍醐味だと思っています。

今村

私が描く未来は、熊本のまちづくりに当行の行員一人ひとりが「自分ごと」として関わり、ワクワクしている状態です。まちが大きくなり、景色が変わっていくことに携わるのは、本来すごく楽しいことなんですよ。

私たちが今「中堅世代」になっても持ち続けているこの感情を、これからはデータというフラットな基盤を通じて、若い世代にもっと若いうちから体験させてあげたい。10年後、15年後にはもっと幅が広がっているはずです。私たちが動くことで熊本が良くなる。その手応えと情熱を全員で分かち合える組織にしていきます。

平野

私たちのゴールの一つは、現場の全員が不動産データを活用できるようになってもらうこと。そのためには、事務的なコストをテクノロジーで極小化し、とにかく「打席」に立ちやすくする必要があります。

熊本のどこかのまちが変わったとき、その象徴的な案件の中に、現場と我々支援室が深く関わっていたという足跡を必ず残します。そうすれば「うちの銀行ってこんなこともできるんだ」「都市開発・街づくり支援室で働いてみたい」と思ってもらえると信じています。

上野

当行が設立されて100年が経ちますが、これまでは「このまちは伸びないだろう」というような、担当者の感覚や主観で判断されてきた部分も少なからずありました。しかし、これからの時代はそれではいけません。今、私たちの世代で客観的な「不動産データ」を資産化し、そこに AI をも融合させることで、過去の属人化したやり方から完全に脱却し、様々な問題解決を推進していきます。

繰り返しにはなりますが、熊本県は今、激しい変化のど真ん中にあって、手つかずのチャンスがあちこちに落ちています。一方で、地方は人口減少も進んでいますから、かつてのように少ないパイを地方銀行同士で奪い合っている場合ではありません。我々は金融のプロであっても、開発やシステムのプロではない。だからこそ、これからは手を取り合うパートナーを増やしていかなければならないのです。

頭取もよく口にしますが、「その地域にどのような地銀があるかでその地域の未来は変わる」と、私も強く信じています。地域課題をひとつひとつ確実に解決し、成功事例を惜しみなく発信していく。熊本から始まり、九州全体を「シリコンアイランド」へと盛り上げ、いずれは私たちの不動産ソリューションが、全国の地方銀行の新しい「ロールモデル」となる。それが究極の目標です。

今はまだようやく走り始めた状態に過ぎませんが、ここから先の未来は、頼もしい後輩たちへとバトンを渡すべく、みんなで創り上げていきます。

お客様について

株式会社肥後銀行
http://www.higobank.co.jp/

熊本県熊本市に本店を置く、県内預金・貸出金シェア1位のリーディングバンク。鹿児島銀行と共に九州フィナンシャルグループの中核を担う。「地域価値の創造」を掲げ、地元経済の持続的成長を牽引する地域密着型金融機関。

(取材/吉田 健太郎、荒木 啓太 文・編集/吉田 健太郎 撮影/賀谷 友紀)

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