導入背景
全店で毎月数千筆——大量取得する登記簿謄本が、保存も共有もされず「使い捨て」になっていた。
山梨県内に強固な基盤を持ち、地域経済の発展を力強く支える株式会社山梨中央銀行様。
同行では、行内における登記簿謄本データの保存や共有、不動産にまつわる調査業務の効率化に向けて、TRUSTART(トラスタート)の不動産ビッグデータプラットフォーム「R.E.DATA(リデータ)」を全店規模で導入しました。
導入の背景や現場への定着プロセス、さらには今後の展望について、融資審査部 融資審査企画課の小沢様(以下、敬称略)にお話を伺いました。
ご支援内容
不動産ビッグデータプラットフォーム「R.E.DATA(リデータ)」の全店導入および活用支援
ご支援前の状況
- 取得した登記簿謄本のPDFが行内ストレージに保存できず、紙印刷後の削除が常態化。二重取得などのコスト課題があった
- 謄本の取得とは別に、建蔽率・容積率や用途地域などの周辺調査や資料作成に手間がかかっていた
- 多くのツールでは、検索の利用枠やその他システム運用において柔軟性に欠ける部分があり、全店展開や管理コストの面で導入ハードルが高かった
- 長年使い慣れた従来サービスからの切り替えや、現場への定着プロセスに懸念があった
ご支援後のサマリー
- データ保存と行内共有が可能になり、過去データの再利用によって重複取得を防止。ムダな取得コストを削減
- 同一画面で地図や公図からの謄本取得や周辺情報の調査が可能となり、現場の調査業務を大幅に省力化
- 希望の運用フローに沿うような柔軟なカスタマイズがあり、さらに検索利用による従量課金もないため、許容できるコストの範囲内で全店が利用できる体制を構築
- グループウェアでの通達と案内のみ(研修なし)で現場利用が浸透し、約1年で利用比率が従来サービスを逆転
「もったいない」からはじまった模索。使い捨てされていた謄本データを全店の資産に
―― まずR.E.DATAを導入される以前の課題について教えてください。
小沢
最大の課題としては「日常的に大量取得している謄本データが、行内で保存も共有もされずに『使い捨て』になっていた」という点です。
私が営業店にいた2000年代の当時、オンラインで謄本のPDFデータが取得できるようになりました。
しかしながら、金融機関特有のセキュリティ上、オンラインで取得した謄本データをそのまま行内ストレージに保存することが難しかったのです。
また、従来の公的サービスでは「データ取得後、3営業日経つと閲覧できなくなる」という制約があるため、印刷し忘れたりすると再取得が必要になります。
結果、全店で毎月数千筆ものデータを取得する中で、同じ物件の謄本を二重、三重に取得するといったムダが常態化していました。
―― 謄本データの取得にはコストもかかっていますから、もったいないですね。
小沢
そうなんです。あまりにもったいないので、営業店にいた時には個人で「紙を再度スキャナーで読み込み、ファイル名を住所にして保管する」というデータ化を試みたこともありました。
ですが、ひとりの手作業ではとても追いつくような量ではなく、断念せざるを得ませんでした。
その後、謄本データの保存や共有が可能なツールの存在を知って、いくつか検討もしましたが、全店規模で利用してもらうにはコストや使い勝手の面でハードルが高いシステムばかりだったので導入には至らず、積年の課題が残ったままでした。
本部での「管理のしやすさ」と、現場での「使いやすさ」が決め手に
――TRUSTARTや「R.E.DATA」を知ったきっかけは何だったのでしょうか。
小沢
金融機関向けの展示会で、TRUSTARTさんの代表がセミナーで講演されているのを聞きに行ったのがきっかけでした。
操作画面の見た目もきれいで、お話を聞きながら「他社のツールよりも使いやすそうだな」と感じました。
―― 最終的にR.E.DATAが選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
小沢
本部としての「管理のしやすさ」と、現場での「使いやすさ」の両方が揃っていたことです。
多くのツールでは、検索の利用枠やその他システム運用において柔軟性に欠ける部分があったため、全店導入にあたって管理上のハードルが多く存在していました。
一方、R.E.DATAは当行希望の運用フローに沿って柔軟に調整いただき、検索機能も従量課金ではなく使い放題。加えて、オンライン上の地図・公図から範囲を指定して一括で謄本を取ることもできますし、建蔽率や容積率、用途地域といった周辺情報まで同じ画面で調査できます。
これなら許容できるコストの範囲内で全店が利用できますし、現場の業務負担も大きく減らせるなと確信しました。
「使い勝手が良くなるのだから反対する理由がない。ダメなら戻せばいい」と導入を決断
―― 全店での導入にあたり、行内での合意形成やプロジェクトの調整はどのように進められましたか。
小沢
10月半ばに話を聞いて、年明けには導入を決め、2月には申し込みを完了していました。
何千万円も投じて基幹システムをゼロから構築するプロジェクトであれば少なくとも1年以上の調整が必要ですが、R.E.DATAのようなサブスクリプションのサービスであれば、申し込んで利用料を払うだけです。
システム利用料も、全店で複数の地図サービスや検索、データ抽出などの便利な機能が使えるようになるのを考慮すると非常にリーズナブルだったこともあり、「まずは3か月ほどお試しで使ってみて、万が一、現場に受け入れられなければ元の運用に戻せばいい」というスタンスで提案できたため、導入のハードルは高くありませんでした。
―― 行内や現場の皆様からの反対意見などはなかったのでしょうか。
小沢
明確な反対意見は出ませんでしたね。
これまでと同じように謄本が取得でき、保存もできて、さらに地図サービスがついて周辺情報まで調べられるようになり、全面的に使い勝手が良くなるわけですから、反対する理由がありません。
ちなみに、導入後の現場への案内についても、従来の謄本取得の手順とほぼ同じだったので、あえて研修は実施していません。
グループウェアの業務連絡(通達)で基本的な使い方を周知し、その後、いくつか便利な活用法をニュース形式で発信する形で浸透させていきました。
ユーザーの声を即座に反映。現場での評価が高まり1年で利用比率が逆転
―― 導入初期のタイミングで、印象に残っていることはありますか。
小沢
実は導入当初、いくつかの営業店から「R.E.DATAで謄本が取れない」という問い合わせが入ったことがありました。
当時、取得謄本を指定するための地番の入力がテキスト直打ちの仕様だったため、全角・半角の違いや「字(あざ)」の有無、新字体・旧字体の違いで検索エラーになってしまっていたのです。
そこでTRUSTARTさんに「この項目は選択方式にしてほしい」と要望を出したところ、わずか1か月ほどで反映されました。
ほかにも「カンマ区切りで複数一括取得できるようにしてほしい」と使い勝手を改善する要望を出したものも、1~2か月以内には反映されました。
もちろん開発の優先順位もありますし、システム全体への影響度との兼ね合いもありますから、私たちからの要望のすべてが実現したわけではありません。
通常、銀行が外部委託して作ったシステムでさえも、カスタマイズのたびに追加費用と長い開発期間がかかります。
しかも私たちは月額利用料しかお支払いしていないのに、いちユーザーの声をただちに改善する伴走体制には「すごい会社だな」と心から驚きましたし、一気に信頼感が高まりました。
―― 実際に導入されてから、現場の皆様からはどのような声がありましたか。
小沢
現場の方に聞いてみたところ、「データが消えずに見返せるようになった」「建蔽率や容積率、用途地域の調査が便利になった」「地図の切り取りが楽になった」といったポジティブな感想がありました。
謄本を取得する作業自体は従来と大きく変わりませんが、こうした周辺調査や資料作成の手間が省けることが現場で評価されています。
―― 全店での利用状況はいかがでしょうか。
小沢
さきほども申し上げた通り、全店へのR.E.DATAの周知方法はグループウェアでの通達と案内のみだったこともあり、導入してからしばらくは、長年使い慣れた公的サービスの方が利用比率は高かったんです。
ですが、東京など不動産案件が多いエリアの営業店や、住宅ローンを専門に扱う部署などを中心に利便性が評価されて、どんどん活用が進んでいきました。
結果として、導入から1年が経った現在では、謄本データの取得金額をもとにした利用比率ではR.E.DATAが完全に逆転しています。
数字からみても、着実に現場に浸透してきていると実感しています。
金融機関の「こうしたい」をリードしてくれるパートナーに
―― 今後に向けた取り組みや展望について教えてください。
小沢
新しく実装された「商業・法人登記のモニタリング」について、すでにトライアルさせてもらっていますが、企業価値担保権をはじめとする変更登記の動向をタイムリーに追えるので、リスク管理や営業機会の推進において可能性を感じています。
また、担保不動産の洗い替え業務においても、2026年10月の法改正で不動産登記受付帳によるモニタリングができなくなるため、別の手法への切り替えが急務となっています。
定期的に謄本を取得して新旧データの差分を検知する仕組みなど、こうした不動産に関連する業務についてもTRUSTARTさんに相談しながら、最適な体制を構築していきたいです。
―― 最後に、今後のTRUSTARTに対する期待をお聞かせください。
小沢
個人的に一番期待しているのは、TRUSTARTさんが保有している『法人関連のビッグデータに基づく将来予測』です。
例えば「短期間で本店の住所変更を繰り返している」「急に事業目的が多数追加されている」といった変更登記のパターンから、「この企業は1年以内にこういう変化が起きやすい」という予測ができれば、金融機関にとってはリスク管理・営業推進のどちらにおいても大きな価値をもたらします。
TRUSTARTさんは、私たちの「こうしたい」という声に親身に伴走してくれるパートナーだと信じていますので、これからもビッグデータと先進的な技術で、金融機関の業務改革を一緒にリードしてくれることを大いに期待しています。
お客様について
株式会社山梨中央銀行
https://www.yamanashibank.co.jp/
山梨県内を中心に、東京都や神奈川県などに店舗を展開する地域密着型の地方銀行。健全経営を堅持しながら、多様な金融サービスと地域社会の課題解決に貢献する業務を行っている。
(取材/吉田 健太郎、平田 高之 文・編集/吉田 健太郎)





