隣地との境界に越境がある物件で、「越境の覚書は取得済みです」と告げられた。書面も現物で確認できた。それなら問題なしと判断してよいか——ここで手を止めるべき理由があります。覚書は当事者間の契約にすぎず、隣地の所有者が代わった時点で、新しい所有者を当然には拘束しないからです。
覚書は登記できません。つまり、書面が存在することと、その効力がいま生きていることは別の問題です。調査で確認すべきは「覚書があるか」ではなく、「覚書に署名した人が、いまも隣地の所有者か」になります。本記事では、越境の覚書がどこまで効くのかを条文にさかのぼって整理したうえで、2023年の民法改正で変わった点、隣地に締結を拒否されたときの選択肢、そして取引前の調査で押さえるべき確認手順までを解説します。
この記事の要点
越境の覚書とは何か——そして、何ではないか
越境の覚書とは、建物の庇・塀・擁壁・樹木の枝や根・配管などが境界線を越えている状態について、隣り合う土地の所有者どうしが現状を相互に確認し、将来の扱いを取り決める書面です。実務では「現状は撤去を求めない。ただし建て替えや大規模修繕の際には是正する」という内容が一般的です。
ここで押さえておきたいのは、覚書が当事者間の契約にとどまるという点です。不動産登記法3条が登記できる権利として定めているのは、所有権・地上権・永小作権・地役権・先取特権・質権・抵当権・賃借権・配偶者居住権・採石権の10種に限られます。覚書という書面自体は、このいずれの権利にも当たらず、登記簿に載せられません。
対比すると分かりやすいのが地役権です。地役権は登記できるうえ、民法281条1項により要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転します。所有者が変わっても効力が続くということです。もっとも、越境の存置を目的として地役権を設定する実務を紹介した公的資料は確認できませんでした。現実には、越境の処理は登記になじまない覚書に委ねられているのが実情です。
登記できず、かつ債権契約にとどまるということは、第三者に対して当然には主張できないということでもあります。契約は原則として当事者だけを拘束します。隣地が売却され所有者が変わったとき、新しい所有者は覚書の当事者ではありません。
覚書が効かなくなる3つの場面
1. 隣地の所有者が変わった
最も起こりやすいのがこれです。覚書を交わした相手が土地を売却した場合、買主は覚書の内容を知らないまま所有者になることがあります。売主から買主へ契約上の地位を承継させる合意があれば別ですが、それは売主・買主間で別途取り決めが必要です。こちら側が関与しないところで承継が失われる、という構造になっています。
だからこそ、調査の実務では覚書の現物を確認したうえで、署名者の氏名が現在の隣地の登記名義人と一致しているかを突き合わせる必要があります。氏名が違えば、その覚書はすでに当事者を失っている可能性があります。相続で名義が変わっている場合は、相続人が一般承継人として地位を引き継ぐと整理できますが、売買による移転ではその整理は使えません。
2. 自社側が売却したときに引き継がなかった
逆向きも同じです。越境されている側の土地を売却するとき、覚書の存在を買主に伝え、地位を承継させる手当てをしなければ、買主は隣地に対して覚書上の権利を主張できません。売買契約書に覚書を添付し、承継について明記しておくのが実務的な対応になります。
3. 対象物と是正時期が特定されていない
書面はあるが「越境物については将来話し合う」といった抽象的な記載しかない、というケースがあります。これでは何をいつ是正するのかが定まらず、紛争になったときに機能しません。測量図や写真を添付して対象物を物理的に特定し、是正のきっかけとなる事由(建て替え、大規模修繕、所有者の変更など)を明記しておく必要があります。
2023年の民法改正で、竹木の扱いが変わった
越境のうち竹木の枝と根については、2023年4月1日に施行された改正民法で取り扱いが変わりました。改正前の233条1項は、枝が越境してきた場合に竹木の所有者に切除させることができると定めるのみで、自ら切り取ることは認めていませんでした。所有者が応じなければ、訴訟で切除を命じる判決を得るしかなかったということです。
改正後は、一定の場合に限って越境された側が自ら枝を切り取れるようになりました。
| 対象 | 原則 | 自ら切り取れる場合 |
|---|---|---|
| 枝 | 竹木の所有者に切除させる(233条1項) | ①竹木の所有者に切除を催告したが、その所有者が相当の期間内に切除しないとき ②所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき ③急迫の事情があるとき(233条3項各号) |
| 根 | (切除させる規定なし) | 越境された側がそのまま切り取れる(233条4項) |
越境してきた竹木が数人の共有に属するときは、その共有者の各人が、他の共有者の同意を待たずに枝を切り取れることも明記されました(233条2項)。
あわせて、隣地使用に関する209条も改正されました。改正前の見出しは「隣地の使用請求」で、隣地の使用を請求できるにとどまっていました。現行の209条1項は、①境界又はその付近における障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、②境界標の調査または境界に関する測量、③233条3項の規定による枝の切取り——この3つの目的のため、必要な範囲内で隣地を使用できると定めています。
ここで見落とせないのが、③が「233条3項の規定による」切取りに限られていることです。前述の3つの例外事由を満たさないまま隣地に立ち入ることは、この条文では正当化されません。
使用にあたっての制約も複数あります。住家には居住者の承諾がなければ立ち入れません(1項ただし書)。使用の日時・場所・方法は、隣地の所有者と現に使用している者にとって損害が最も少ないものを選ぶ必要があり(2項)、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知しなければなりません(3項。事前通知が困難なときは使用開始後遅滞なく)。損害が生じれば償金の請求も受けます(4項)。
そして最も実務的な注意点として、法務省は、隣地を使用できる権利がある場合でも一般に自力執行は禁止されているため、使用を拒まれた場合には妨害禁止の判決を求めることになる、と説明しています。条文ができたからといって、実力で立ち入ってよいわけではありません。
注意したいのは、この改正が竹木の枝と根に限った話だという点です。塀・擁壁・建物の庇・地中の配管といった工作物の越境には適用されません。工作物については、依然として所有権に基づく妨害排除請求によることになります。
「放置すると時効取得される」は本当か——裁判例で確かめる
越境を放置すると越境部分の土地を時効取得されてしまう。逆に、覚書を交わせば時効は防げる。どちらもよく見かける説明です。実際の裁判例に当たると、見え方が変わります。
民法162条は、所有の意思をもって、平穏かつ公然と20年間(占有開始時に善意無過失なら10年間)他人の物を占有した者が、その所有権を取得すると定めています。そして186条1項により、所有の意思は推定されます。つまり、争う側が推定を覆す事情を立証しなければなりません。
最高裁は、この推定が覆されるのは、①その性質上所有の意思のないものとされる権原に基づいて占有を取得した事実が証明されるか、②占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、あるいは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情が証明されるとき、としています(最判昭和58年3月24日)。判断の基準は占有者の内心ではなく、外から見て取れる事情だということです。
実際に時効取得が認められた例
建物の外壁と、庇・立体看板が隣地に越境していた事案があります(大阪地判令和5年10月26日・令和2年(ワ)第9357号)。土地の所有者が所有権に基づいて撤去を求めたのに対し、建物の所有者は反訴で、外壁の直下にある土地を10年間占有し、占有を始めた時にそれを自分の所有だと信じたことに過失はなかったとして、短期取得時効による所有権の取得を主張しました。
裁判所はこの反訴を認めています。外壁直下の土地については時効取得を認めて所有権移転登記手続を命じ、一方で庇・立体看板の下の土地については占有していたとは認められないとして、そちらは撤去を命じました。判断を分けたのは「越境物があるかどうか」ではなく、その真下の土地を排他的に支配していたと評価できるかどうかです。空中にせり出しているだけの庇や看板は、土地の占有とは評価されませんでした。
この判決はあわせて、撤去請求が権利の濫用に当たるとまではいえないとも判断しています。越境の程度が小さければ撤去請求は退けられる、と単純に考えるのは危険だということです。
「覚書で時効を防げる」を裏づける裁判例は見つからなかった
覚書は権利の承認(民法152条1項)に当たるので、そこから時効が新たに進行する——という説明が流通しています。しかし、越境の覚書を152条1項の承認と認定した裁判例は、今回の調査では確認できませんでした。「覚書があるから時効取得されない」と言い切れる根拠は、少なくとも公表された裁判例の中には見当たりません。
覚書が無意味だという意味ではありません。越境部分が隣地所有者の所有であることを明記した書面は、前掲の最高裁がいう「外形的客観的な事情」を示す資料になりえます。ただし、それが決定打になるかどうかは事案によります。
したがって調査の実務では、越境が長期間続いている物件は、時効取得の主張が持ち出されうる前提で見ておくのが安全です。覚書の有無だけで安心せず、越境がいつから続いているのかを、売主や隣地への聴取と過去の図面で確かめておく必要があります。
覚書を拒否されたときの選択肢
越境の覚書は契約ですから、隣地が応じなければ成立しません。実務では拒否されることが珍しくなく、その場合の対応が問題になります。
撤去を求める——ただし権利濫用の壁がある
越境されている側は、所有権に基づいて越境物の撤去を求めることができます。この妨害排除請求権には民法上の明文規定はなく、所有権の効力として解釈上認められてきたものです。
もっとも、請求が常に通るとは限りません。民法1条3項は「権利の濫用は、これを許さない」と定めています。越境の程度がごくわずかで、撤去に多額の費用がかかり、請求する側の実質的な利益が乏しいような場合には、撤去請求が権利濫用として退けられる可能性があります。
ただし、権利濫用は簡単に認められるものではありません。前掲の大阪地裁の判決は、庇と立体看板の撤去請求について権利の濫用に当たるとまではいえないと判断し、撤去を命じています。撤去を求められる立場にあることと実際に撤去させられることは別ですが、その逆——越境が小さいから撤去は求められないはず——も成り立たないと考えておくべきです。
筆界特定制度は「所有権の争い」を解決する制度ではない
境界があいまいな場合に、法務局の筆界特定制度を使う選択肢があります。土地の所有権登記名義人等が申請でき、筆界調査委員の調査を経て、筆界特定登記官が筆界の位置を特定する手続きです(不動産登記法131条ほか)。
ただし、ここには実務上よく誤解される限界があります。筆界特定が特定するのは「筆界」であって、「所有権の境界」ではありません。筆界とは、その土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点と、これらを結ぶ直線のことです(同法123条1号)。登記された時点を基準に定まるものとされており、当事者の合意で動かせる性質のものとは扱われていません。同法132条1項5号は、所有権の境界の特定を目的とする申請を却下すべきものと定めており、135条2項も、筆界調査委員は事実の調査に当たり、筆界特定が対象土地の所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならないとしています。
越境の紛争は、多くの場合「どこまでが自分の土地か」という所有権の争いです。筆界特定で筆界がはっきりしても、時効取得の主張などが絡む所有権の帰属は決着しません。制度の射程を理解したうえで使うべき手続きだと言えます。
ADRの「覚書調停」という選択肢
当事者だけで話がまとまらない場合、士業団体のADRを使う手があります。境界紛争解決センターぎふ(岐阜県土地家屋調査士会が岐阜県弁護士会と協働して運営する法務大臣認証ADR)は、通常の調停手続を極限まで簡素化して期日1回で覚書を作成する「覚書調停」を案内しており、期日1回の場合は調停申立手数料2万円と期日手数料2万円の計4万円(税別)、期日2回までに和解が成立すれば成立手数料(通常税別10万円)はかかりません。担当するのは弁護士1名・土地家屋調査士2名の調停員です。
あわせて同センターの案内資料は、弁護士以外の者が越境物に関する覚書を業務として作成すると、弁護士法72条の非弁行為とされる恐れがあるとされていると述べています。自社で文案を作って当事者に渡す進め方には、この点でも注意が要ります。
現実的な着地
覚書に至らなかった場合でも、記録を残すことには意味があります。測量図と写真で越境の位置・範囲を特定し、是正を求めた事実を書面で通知して控えを保管する。この積み重ねが、後の交渉や取引時の説明材料になります。取引にあたっては、覚書がない事実と交渉の経緯を買主に説明し、契約書で責任の所在を明確にしておくことが欠かせません。
覚書に盛り込む項目
| 項目 | 内容 | 抜けたときのリスク |
|---|---|---|
| 当事者と対象土地 | 双方の氏名・住所、対象土地の所在・地番 | 誰と誰の合意か特定できない |
| 越境物の特定 | 種類・位置・範囲。測量図と写真を添付 | 後日「その部分は含まれない」と争われる |
| 現状の承認 | 現状のままの存置を相互に認める旨 | いつ撤去を求められるか分からない |
| 是正の時期と方法 | 建て替え・大規模修繕等の際に是正する旨と、その方法 | 「将来話し合う」だけでは実行されない |
| 費用負担 | 是正費用を誰が負担するか | 是正の段階で交渉が振り出しに戻る |
| 承継 | 第三者へ譲渡する際は本覚書の地位を承継させる旨 | 所有者が代わった時点で効力を失う |
なお、公的性格のある機関が公開している越境覚書のひな形は、調べた範囲では境界紛争解決センターぎふの「和解契約書(例)(越境物に関する覚書)」1件だけでした。その構成は、①越境の事実の相互確認 ②現状を変更しない限り現状を容認し撤去等を請求しない旨 ③将来の敷設替え等の機会に撤去または移設し、越境部分の敷地について所有権等の権利を主張しない旨 ④第三者へ譲渡する場合は各々の責任で本覚書を承継させる旨——の4条のみです。上の表のうち費用負担や図面の添付は、この公的ひな形には含まれていません。実務上あったほうがよい項目として補うもの、と理解してください。
とくに承継条項は落とせません。ただし、承継条項があっても、それは当事者が承継させる義務を負うという約束にとどまります。不動産流通推進センターの相談事例も、覚書に「次の所有者(買主)にも承継される」と書いてあっても、その内容を買主が承諾しない限り実質的な承継の効力は生じないとしています。合意が第三者に直接効力を及ぼすのではなく、譲渡人が譲受人に内容を承継させる義務を相手方当事者に負う、という効果があるだけだという整理です。
したがって、隣地の所有者が変わったことが分かったら、あらためて覚書を取り交わすのが確実です。同センターも、内容を知りながら譲り受けた新所有者が拘束を否定することは信義則や権利濫用の観点から認められない可能性はあるとしつつ、結論としては再締結を勧めています。
重要事項説明での扱い
越境の事実それ自体を説明事項として掲げた号は、宅地建物取引業法35条1項にはありません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」にも、越境に関する記述はありません。ここを「35条の説明義務違反」と整理してしまうと、法的な根拠を誤ることになります。なお、越境の処理として地役権が登記されていれば、それは1号の「登記された権利の種類及び内容」として説明の対象になります。
ただし、列挙にないことは説明しなくてよいことを意味しません。35条1項の柱書は「少なくとも次に掲げる事項について」と定めています。前掲の解釈・運用の考え方も、各号の事項は「宅地建物取引業者がその相手方又は依頼者に説明すべき事項のうち最小限の事項を規定したものであり、これらの事項以外にも場合によっては説明を要する重要事項があり得る」としています。列挙は上限ではなく下限だということです。
加えて、同法47条1号ニは、宅地・建物の「所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境」など、相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなる事項について、契約の締結の勧誘に際して故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁じています。越境は物件の利用や建て替えに影響する事実ですから、これに該当しうる情報です。
もっとも47条1号ニには「故意に」という要件があり、調査を尽くさなかった結果の不説明までは捕捉できません。そこを埋めるのが、媒介契約上の調査・説明義務と信義則上の説明義務であり、実務の主戦場は判例法理になります。根拠条文を正確に押さえたうえで、実務上は必ず説明するという理解が適切です。
調査実務での確認手順
越境の調査は、書面と現地を往復しながら進めます。
- 公図と地積測量図で筆界の位置を把握する — 地積測量図があれば境界標の位置まで確認できます。詳しくは地積測量図の見方と取得方法を参照してください。
- 現地で境界標と越境物を確認する — 境界標の有無、庇・塀・擁壁・樹木・配管の位置関係を、写真とともに記録します。地中の配管や空中の電線は現地目視では拾えないため、図面と所有者への聴取で補います。
- 覚書の有無と内容を確認する — 対象物が特定されているか、是正時期と費用負担が定まっているか、承継条項があるかを見ます。
- 隣地の登記事項証明書で当事者を突き合わせる — 覚書の署名者と現在の所有権登記名義人が一致するかを確認します。ここが本記事の要点です。
4番目の確認は、隣接するすべての土地について行う必要があります。角地や不整形地では隣接筆が5筆、6筆と増えることも珍しくなく、一筆ずつ地番を調べて謄本を取得していく作業は負担が大きい部分です。R.E.DATAはブルーマップと連携した地図上で対象地とその隣接筆を選択し、登記簿をまとめてオンラインで取得できます。所有者名の一覧をエクセルに出力できるため、覚書の署名者との突き合わせもその場で完結します。
また、隣地の所有者が過去に変わっているかどうかは、登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)の移転履歴で確認できます。覚書の作成日以降に所有権移転が入っていれば、その覚書は当事者を失っている可能性が高いということです。謄本取得業務の効率化のページに、地図からの一括取得の流れをまとめています。
まとめ|明日からできる3つのアクション
- 越境の覚書は債権契約であり、登記できない。隣地の所有者が変われば、新所有者を当然には拘束しない。
- 2023年4月1日施行の改正民法で、竹木の枝は一定の場合に自ら切り取れるようになった。根はもともと自ら切り取れる。塀や擁壁などの工作物には適用されない。
- 越境部分の時効取得は現実に認められている(大阪地判令和5年10月26日)。分かれ目は越境物の有無ではなく、その真下の土地を占有していたかどうか。「覚書があるから時効取得されない」と言い切れる裁判例は確認できなかった。
- 筆界特定制度が特定するのは筆界であって所有権の境界ではない。越境をめぐる所有権の争いは、この手続きでは決着しない。
- 越境は35条1項の列挙事項ではないが、故意に告げなければ47条1号ニに触れうるうえ、媒介契約上の調査・説明義務や信義則からも説明すべき事項として扱われる。
- 手元の覚書の署名者を、隣地の現在の登記名義人と照合する。 一致しなければ、その覚書は機能しない前提で対応を組み立てる。
- 承継条項の有無を確認する。 自社が売却する側なら、売買契約書に覚書を添付し、地位の承継を明記する。
- 覚書に至らなかった案件は、記録を残す。 測量図・写真・書面通知の控えが、後の交渉と説明の裏づけになる。
越境は、現地に立てば見える事実でありながら、書面で裏付けなければ取引のリスクとして残り続けます。覚書という書面の存在に安心せず、その効力がいま誰との間で生きているのかまで確認する。この一手間が、引き渡し後のトラブルを防ぎます。
参考(一次情報)
- 民法(明治29年法律第89号)1条3項、152条1項、162条1項・2項、186条1項、209条1項〜4項、233条1項〜4項、281条1項
- 最高裁判所 昭和58年3月24日判決(所有の意思の推定が覆される要件)
- 大阪地方裁判所 令和5年10月26日判決(令和2年(ワ)第9357号・所有権に基づく妨害排除請求事件)——裁判所ウェブサイト裁判例検索
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
- 不動産流通推進センター 不動産相談事例(越境の覚書の承継)
- 弁護士法(昭和24年法律第205号)72条
- 境界紛争解決センターぎふ「簡易調停による越境物に関する覚書作成について」および同チラシ(和解契約書(例)(越境物に関する覚書)を収載。全日本不動産協会岐阜県本部 2023年5月1日掲載)
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)3条、123条1号、131条1項、132条1項5号、135条2項
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)35条1項、47条1号ニ
- 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)——233条・209条の改正。施行日は令和5年4月1日
- 法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」
条文はすべて e-Gov 法令検索の現行条文で確認した(2026年7月28日時点)。改正の施行日は、e-Gov の改正沿革(令和3年法律第24号・施行日2023年4月1日)、改正前後の条文データの実比較、および法務省の公表資料の3点で突き合わせている。なお、所有権に基づく妨害排除請求権に民法上の明文はなく、解釈上認められてきたものである。枝と根で扱いを分ける理由は条文に書かれていないため、本記事では立ち入っていない。越境の覚書を民法152条1項の承認と認定した裁判例、越境の存置を目的として地役権を設定する実務の公的な解説、および越境が融資判断に与える影響を示す公的資料は、いずれも確認できなかったため、本記事ではこれらを事実として記述していない。





