本記事は2026年6月23日に公開した記事に、2026年6月実施のオンラインセミナー「10月法改正で仕入れが激変!受付帳の閲覧制限への新対策を徹底解説」の内容を反映し、全面的に加筆・更新したものです。収録動画(約25分)はこちら。
「登記受付帳が廃止される」「受付帳が非公開になる」。2026年10月の法改正をめぐって、こうした言葉を耳にした方は多いはずです。ただ、これは正確な表現ではありません。実際に起きるのは、受付帳の記録事項から「登記の目的」と「不動産所在事項」が削除されるという変更で、受付帳そのものは改正後も開示請求できます。
では、実務への影響は小さいのかというと、話は逆です。「どこの不動産に、どんな登記があったか」が読み取れなくなる以上、相続物件を特定する起点としての受付帳は、事実上機能しなくなります。受付帳を仕入れの入口にしてきた会社ほど、この10月を境に仕入れ手法の組み替えを迫られます。そこで本記事では、改正の正確な中身、対応を後回しにした場合のリスク、そして受付帳に代わる選択肢を整理したうえで、売却の「予兆」をとらえる売買予測モデルと保有データの活用法まで解説します。
この記事の要点
前提|登記受付帳とは何か。2026年10月に何がどう変わるのか
国への開示請求の約64%を占める、仕入れの定番情報源だった
登記受付帳は、いつ・どの不動産に・どんな目的の登記申請があったかを法務局が記録した行政文書です。行政機関情報公開法に基づく開示請求により、法人・個人を問わず、理由も問われずに取得できます。
どれだけ使われてきたかは、数字が物語っています。総務省の集計によれば、令和6年度に国の行政機関へ寄せられた開示請求215,425件のうち、法務省の「不動産登記受付帳」に関するものが138,476件。国への情報公開請求の約64%が、この1種類の文書に集中している計算です(出典:総務省)。土地・建物の権利異動、とりわけ相続の発生をいち早く面でとらえられる情報源として、不動産会社の仕入れ活動を支えてきました。
改正で消えるのは「登記の目的」と「不動産所在事項」
この受付帳の中身が、2026年10月1日に変わります(不動産登記規則等の改正。省令は2025年10月10日に公布済み)。改正後の受付帳に記録されるのは受付の年月日と受付番号だけになり、「登記の目的」と「不動産所在事項」は記録されなくなります。
誤解のないように整理すると、受付帳が廃止されるわけでも、開示請求の対象から外れるわけでもありません。法務省も、情報公開の対象外とする改正ではないと明言しています。ただし、「どこの不動産に、どんな目的の登記があったか」が読み取れなくなるため、相続登記のあった物件を受付帳から拾い上げるという使い方は、事実上成り立たなくなります。「廃止」「閲覧制限」という言葉が広まっているのは、この実務上の影響がそれほど大きいからです。
なぜ、いま見直されるのか
背景には、受付帳の本来の性格があります。受付帳はもともと、登記申請の先後関係の確認など、法務局内部の事務処理を円滑にするための帳簿でした。それが情報公開制度を通じて営業リストの起点として大量に請求されるようになり、本来の目的と利用の実態にずれが生じていました。今回の改正は、このずれの解消を趣旨としています。改正案への意見募集には205件の意見が寄せられ、存続を求める声も多くありましたが、原案どおり公布されました(出典:法務省)。
対応を後回しにすると何が起きるか
施行は2026年10月1日と、期限が確定しています。対応を先送りした場合に想定されるリスクは、次の3つです。
| リスク | 何が起きるか |
|---|---|
| ① 仕入れ機会の損失 | 受付帳で売却の兆候をとらえてきた会社は、代わりのシグナルを持たないかぎり、案件の入口そのものが細っていく |
| ② 獲得コストの上昇 | 各社が一括査定サイトや広告といった既存チャネルに集中し、競争の激化とともに1件あたりの獲得コストが上がりやすくなる |
| ③ 移行の先行者との差 | 受付帳の実質的な終了は確定事項。代替手法へ早く移った会社から成果が積み上がり、対応の速さがそのまま仕入れの差になる |
重要なのは、受付帳が使えなくなるからといって、施策そのものを止めてしまわないことです。市場のルールが変わる局面では、立ち止まった会社と動いた会社の差が普段より大きく開きます。施行前の今のうちに、次の仕組みへの移行を始めておくことが肝心です。
受付帳に代わる5つの選択肢
では、何に切り替えるか。考えられる選択肢は大きく5つあり、それぞれに強みと課題があります。
| 選択肢 | 概要 | 課題 |
|---|---|---|
| ① 過去データの活用 | これまでに取得した受付帳・相続データでDM施策を継続する | 更新が止まるため、データは時間とともに古びていく |
| ② 査定サイト・広告 | 一括査定やポータル、Web広告で売却反響を獲得する | 各社が集中するため競争が激しく、獲得単価が上がりやすい |
| ③ 業務効率化(BPO・システム) | 代行やシステム導入で営業時間を捻出する | 初期投資が必要で、仕入れの入口そのものは増えない |
| ④ 売買予測モデル | 売却可能性の高い土地をスコアで特定し、先回りする | データとAIによる新しい仕組みづくりが必要 |
| ⑤ 保有データの活用 | 蓄積済みの謄本・所有者データからターゲットを抽出する | 精度を出すには、母数となるまとまったデータが要る |
このうち①〜③は、いずれも「今あるやり方を守る」性格の選択肢です。それ自体は必要な備えですが、受付帳が担っていた「売却の兆候を面でとらえる」機能の置き換えにはなりません。そこで本記事では、その機能を引き継ぐ本命として、④売買予測モデルと⑤保有データの活用を掘り下げます。
売買予測モデル|売却の「予兆」は、登記に表れる
売却前の不動産には、共通する登記の動きがある
売買予測モデルの出発点は、シンプルな観察です。不動産が売却される前には、登記に共通の「予兆」が表れます。たとえば、複数の土地をひとつにまとめる合筆。面積を測り直して登記簿の地積を改める地積の変更・更正。そして、オーナーの住所や氏名を現況に合わせて直す変更登記です。いずれも、売却の準備として権利関係を「きれいにする」動きにあたります。
TRUSTARTの分析では、合筆後の売買率は35.0%、地積の変更・更正など表題部の変更登記後は31.8%、住所・氏名の変更登記後は34.2%でした(TRUSTART自社データ分析)。こうした登記が行われた不動産の、およそ3件に1件がその後売買されている計算です。売却の予兆は、受付帳がなくても登記データそのものから読み取れます。
ひとつ、押さえておきたい制度変更があります。所有権の登記名義人の住所・氏名の変更登記は、2026年4月1日から申請が義務化されました(変更から2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象。出典:法務省)。義務化を受けて、変更登記そのものの件数は今後増えていくとみられます。したがって、住所・氏名の変更登記を単独のシグナルとして扱うのではなく、合筆や地積の変更・更正などほかの予兆や物件側の条件と重ねて読むことが、これからはいっそう重要になります。
AIのスコアリングで、アプローチの成果は約6倍に
この予兆のパターンを、TRUSTARTが保有する2,700万件超(2014〜2025年)の土地の登記データでAIに学習させ、個々の土地の売却確率をスコア化したものが売買予測モデルです。
効果は数字に表れています。母集団全体に絞り込みなしでアプローチした場合、その後の売買転換率は7.6%でした。一方、AIが売却確率が極めて高いと判定した上位5%に絞ってアプローチすると、売買転換率は48.3%。およそ6倍の差です(TRUSTART自社データ分析)。
この差が意味することは、シンプルです。受付帳という共通の情報源が消えた後の仕入れでは、「誰に当たるか」を決めるリストの精度が、そのまま競争力になります。同じ営業人員、同じ訪問件数でも、当たる先の精度が変われば成果は数倍単位で変わる。これが、受付帳後の仕入れ戦略の軸になる考え方です。
いま手元にあるデータを、仕入れの資産に変える
売買予測モデルとあわせて、すでに保有しているデータの活用余地も見直しておきましょう。切り口は4つあります。
① 過去の相続情報:10年分の蓄積は、施行後も使える
受付帳の新規データは2026年10月で途絶えますが、過去分の価値まで消えるわけではありません。TRUSTARTは10年以上にわたる受付帳データを蓄積しており、たとえば「過去に相続が発生し、かつ現時点でまだ所有権が移転していない物件」という条件で抽出できます。相続から数年を経て売却に至る物件は少なくないため、過去分だけでも仕入れリストとして十分に機能します。なお、相続を経たオーナーへのアプローチでは、時期や文面への十分な配慮が前提になります。
② 履歴謄本:取得済みの謄本は「絞り込める名簿」になる
過去に取得した謄本には、オーナーの氏名と住所が記録されています。これを蓄積・整理すると、物件の所在とオーナーの住所が一致しない空き家・空き地の候補、法人所有の物件、特定のエリアに住むオーナーといった条件で絞り込めるリストに変わります。本来は謄本を取ってみなければ分からない情報から逆引きできることが、履歴活用の強みです。
③ アセット情報:権利異動がなくても、売却予備軍はとらえられる
農地・駐車場・アパート・マンション・ビル・ホテルといったアセットタイプ別の情報も、仕入れの切り口になります。たとえば、築古のアパートで代替わりがされていない物件は相続予備軍としてアプローチできますし、駐車場は2027年度の固定資産税評価替えを控えた「売り時」の提案先になります。この2つの切り口は、アパートの売買データ分析と駐車場の売買データ分析でそれぞれ詳しく解説しています。
④ 定期的な謄本の再取得で、権利異動そのものを検知する
受付帳が担っていた「異動の検知」は、注力エリアの全部事項を3ヶ月・半年・1年といった間隔で再取得する方法でも代替できます。前回の取得時と比べて所有者の氏名や住所が変わっていれば、それが権利異動のシグナルです。安価に使える履歴データから始めて、エリアを段階的に絞り込みながら再取得の頻度を上げていけば、コストを抑えつつ検知の精度を高められます。
まとめ|施行までにやっておく3つのこと
- 2026年10月1日の改正で受付帳から「登記の目的」「不動産所在事項」が消える。廃止ではないが、相続物件の特定起点としては事実上使えなくなる。
- 各社が既存チャネルへ集中するため、競争激化と獲得コストの上昇が見込まれる。施策を止めた会社と動いた会社の差が開きやすい局面になる。
- 受付帳の後継は、売却の予兆をとらえる売買予測モデルと保有データの活用。「誰に当たるか」のリストの精度が競争力になる。
施行までに着手しておきたいことは、次の3つです。
- 自社の仕入れリードのうち、受付帳由来が何割を占めるかを定量化する
- 過去の受付帳データと取得済みの謄本を棚卸しし、「まだ動いていない相続物件」「空き家・空き地の候補」のリストに変える
- 売買予測モデルなど、売却の予兆をとらえる仕組みを施行前に試し、いまの手法と成果を比較しておく
受付帳の実質的な終了は、たしかに大きな環境変化です。しかし、売却の予兆そのものが消えるわけではありません。予兆は受付帳ではなく、登記データと保有データの中に残り続けます。それをどれだけ精度高く拾えるかが、これからの仕入れの分かれ目になります。
なお、本記事のもとになったセミナーの収録動画(約25分)はYouTubeで公開しています。あわせてご覧ください。
CONTACT 受付帳が使えなくなる前に、次の仕入れの仕組みを。 「受付帳由来のリードがどれくらいあるか分からない」「過去の相続データや履歴謄本をリストに変えたい」「売買予測モデルを試したい」。こうしたご相談に対して、過去データの抽出から売買予測モデルのご案内まで、R.E.DATAがまとめてご支援します。まずはお気軽にご相談ください。参考(一次情報)
本記事中の制度に関する記述は、以下の公的資料を確認のうえ作成しています。
- 「不動産登記規則及び企業担保登記規則の一部を改正する省令」(令和7年法務省令第49号。2025年10月10日公布/2026年10月1日施行。受付帳の記録事項から「登記の目的」「申出の目的」「不動産所在事項」を削除)
- 法務省民事局「不動産登記規則等の一部を改正する省令案の概要に関する意見募集の結果」(意見205件。受付帳を情報公開の対象外とする改正ではない旨を明記)
- 総務省「令和6年度における行政機関情報公開法の施行の状況について」(2025年9月公表。開示請求215,425件のうち不動産登記受付帳138,476件)
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」(2026年4月1日施行。変更日から2年以内の申請義務・正当な理由のない申請漏れは5万円以下の過料の対象)
- 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第3条/不動産登記法 第119条
※本記事内の分析データ(登記種別ごとの売買率、絞り込み有無による売買転換率、保有データ件数等)は、TRUSTARTの保有する不動産データに基づく自社分析です(数値は2026年6月セミナー時点)。制度の記述は上記の公的資料に基づきますが、個別の判断にあたっては最新の一次情報をご確認ください。





