「検査済証が見当たらない」——中古物件の売買・融資・リフォームの現場で頻繁に起きる場面です。確認済証・検査済証は再発行されませんが、交付された事実は公的に証明できます。それが台帳記載事項証明書です。本記事では、証明される内容から建築計画概要書との使い分け、2026年時点のオンライン申請対応までを一次ソースベースで整理します。
台帳記載事項証明書とは — 建築確認台帳の記録を公印付きで証明する書類
特定行政庁(建築主事等を置く市区町村の長または都道府県知事)は、建築確認その他の処分に係る建築物の台帳を整備し、保存する義務を負っています(建築基準法第12条第8項)。この台帳は建築物が滅失・除却されるまで保存することとされており(建築基準法施行規則第6条の3)、確認申請図書等(確認済証の交付日から15年間保存)より長く残る記録です。
台帳記載事項証明書は、この台帳に記録された事項——実務上は確認済証の交付年月日・番号、検査済証の交付年月日・番号、建築主、敷地の地名地番、主要用途・構造・階数・面積など——を、特定行政庁が公印付きの証明書として発行するものです(東京都・豊島区などの案内による)。
なお名称は自治体によってばらつきがあり、「建築確認台帳記載事項証明」(名古屋市)、「建築台帳記載事項証明書」(千葉市)、「建築確認申請台帳記載証明書」(横浜市)、「確認済証明書(台帳記載事項証明書)」(東京都中央区)などはいずれも同種の証明書です。
証明される内容の例
様式は自治体ごとに異なりますが、証明項目はおおむね共通しています。豊島区の例では次の事項が証明されます。
- 敷地の地名地番
- 建築主の氏名
- 主要用途・構造・階数・面積
- 確認済証の発行年月日・番号
- 検査済証の発行年月日・番号
逆に、付近見取図・配置図などの図面は含まれません。図面を確認したい場合は建築計画概要書の閲覧を併用します。
検査済証の代わりになる?
確認済証・検査済証は再発行できない、と多くの特定行政庁が明示しています(東京都「建築確認済証や検査済証を再発行するものではありません」など)。紛失した場合の代替が台帳記載事項証明書で、自治体が挙げる使いみちとしては金融機関等融資先への提出、不動産売買、建物表示登記、建築確認申請があります(千葉市の交付対象例)。国土交通省の研究会報告書でも、中古住宅の流通段階で「金融機関が融資の可否を判断するに当たり、検査済証が求められる場合が多い」と指摘されており、検査済証を紛失した物件では台帳記載事項証明書が事実上の裏付け資料になります。
ただし、次の3つの限界に注意が必要です。
- 検査済証の交付年月日が台帳に記載されていない場合がある:東京都は「検査済証の交付年月日については、検査の状況によって台帳に記載がない場合があります」と案内しています。完了検査を受けていない建物などでは、検査済証欄は「記載なし」となります
- 台帳が現存せず発行できない場合がある:古い建物では台帳自体が残っていないことがあります
- 建物の適法性を証明するものではない:あくまで「いつ・どの番号で確認・検査を受けたか」の記録であり、現行法への適合を保証するものではありません
そもそも検査済証の交付を受けていない建物の増改築・用途変更については、国土交通省のガイドラインに基づき、建築士や指定確認検査機関による現況調査(法適合状況調査)を活用する道があります。2014年公表の「検査済証のない建築物に係るガイドライン」は2025年4月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」へ統合されており、この調査で用いる資料の一つにも建築台帳記載証明書が挙げられています。
建築計画概要書との違い・使い分け
- 台帳記載事項証明書:確認・完了検査の履歴(交付年月日・番号)を公印付きの証明書として発行してもらう書類。図面はない
- 建築計画概要書:確認申請時の計画内容(建築主・面積・付近見取図・配置図等)を閲覧・写しの交付で確認する書類。証明書ではない
金融機関や登記など提出先に「証明」を求められたら台帳記載事項証明書、敷地設定や配置など計画の中身を調べたいなら概要書、というのが基本の使い分けです。物件調査では両方をセットで取得し、登記記録・現況と突合するのが定石です。台帳は概要書とは別に保存されているため、概要書が廃棄済みでも台帳証明で履歴を確認できる場合があります。
取得方法 — どこで・いくらで・何が必要か
どこで:物件所在地を所管する特定行政庁(建築指導課等)の窓口です。都道府県所管分と市区町村所管分で窓口が分かれる点に注意してください。たとえば東京都が発行するのは都所管分(23区及び島しょに関するもの)で、区が確認した物件は各区、多摩地域は各市等の窓口になります。
手数料:1通(1件)あたり大阪市250円、横浜市・千葉市・名古屋市300円、東京都400円、大阪府980円など、250〜980円と自治体によって大きな幅があります。
必要な情報:建築物の特定のため、地名地番(住居表示ではなく建築当時の地番)・建築時期・建築主名、分かれば確認済証の番号が必要です。住居表示と建築当時の地番が異なる場合、特定に手間取ることがあります。
誰が申請できるか:多くの自治体では申請者を限定していませんが、名古屋市のように建築主または現所有者(委任状による代理可)に限定する自治体や、千葉市のように使用目的を確認する自治体もあります。第三者調査で取得する場合は事前確認が必須です。
オンライン・郵送で取得できる? — 2026年時点の現在地
登記事項証明書のような全国一律のオンライン請求の仕組みはなく(2026年7月時点で国による全国一元のシステムは確認されていません)、対応は特定行政庁ごとにばらばらです。
- 横浜市:2024年10月から電子申請に対応。Web閲覧システムで物件を特定したうえで電子申請し、手数料300円+送料110円(クレジットカード・PayPay払い)、支払い確認後3営業日前後で発送(普通郵便)。対象は平成6年度以降の確認申請物件(順次拡大中)
- 東京都:2024年3月導入のシステムで発行申込が可能。1件400円+郵送料140円(クレジットカード決済のみ、1回の申請で5件まで)
- 大阪市:行政オンラインシステムから申請し郵送交付を受けられる(確認済証番号が分かる物件が対象)
- 千葉市:メールでの申請に対応(申請の郵送・FAXは不可。証明書の受け取りは郵送可)
- 窓口のみの例:名古屋市(来庁が必要)、大阪府(窓口での先着順受付)など
郵送申請の可否も含めて対応は庁ごとに異なり、「オンラインで完結する自治体」はまだ少数派です。複数エリアの物件を扱う実務では、申請先の特定・手続の確認・窓口への訪問が積み重なり、大きな時間コストになります。
「台帳に記録がない」と言われたら
古い建物では台帳の保存・引継ぎ状況により記録が確認できない場合があります(例:豊島区では昭和45年以前に確認申請を受け付けた物件は地図上から履歴を調べられないと案内)。また、無確認建築には当然記録がなく、所管違い(都と区、県と市)で「この窓口では発行できない」となるケースもあります。記録がない場合は、建築計画概要書、登記事項証明書・建物図面、固定資産課税台帳などを組み合わせて建物の履歴を補完するのが実務です。
「長期優良住宅の台帳記載事項証明書」は別物
紛らわしい書類として、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定の記録を証明する書類があります。こちらは長期優良住宅の認定通知書を紛失した場合に認定の事実を証明するもので(名称は「長期優良住宅台帳内容証明」(福岡市)など自治体により異なり、認定通知書の再交付で対応する自治体もあります)、建築基準法の建築確認台帳とは根拠法も内容も別物です。取得の際は「建築確認台帳の記載事項証明」であることを窓口に明確に伝えてください。
まとめ
台帳記載事項証明書は、再発行できない確認済証・検査済証に代わって確認・検査の履歴を公的に証明する、取引・融資実務の必須書類です。ただし取得には所管の特定行政庁の調査・物件の特定・(多くの場合)窓口への訪問が必要で、手数料も対応方法も自治体ごとに異なります。建築計画概要書とセットで取得し、登記・現況と突合するのが調査の定石ですが、対象物件が多い場合・遠隔地の場合は取得代行の活用が現実的です。





