戸建住宅地の多くがこの区分に指定されており、仕入れの現場で最もよく出会う用途地域のひとつです。ただし「厳しい」の中身は用途の狭さだけではありません。絶対高さ・外壁後退・北側斜線・日影規制が同時にかかるため、同じ建蔽率・容積率でも建てられるボリュームが大きく変わります。
第一種低層住居専用地域とは
第一種低層住居専用地域とは、都市計画法9条1項に基づく用途地域のひとつで、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域です。第二種低層住居専用地域(同条2項)は同じ文に「主として」が付き、第一種中高層住居専用地域(同条3項)は守る対象が「中高層住宅」に替わります。1項だけが低層住宅の環境を、ほかの用途が入る前提を置かずに守る書き方で、これが用途の列挙の狭さにつながります。
街の姿でいえば、戸建てと低層の共同住宅が並び、店舗の看板がほとんど出てこない住宅地です。日常の買い物先は隣の区分や幹線道路沿いにあります。
建てられる建物・建てられない建物
建築基準法48条1項は「別表第2(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない」と定めます。多くの区分が禁止列挙であるのに対し、ここは許可列挙で読み方が逆になり、列挙にない用途は規模を絞っても原則として建てられません。ただし特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合は例外があります(48条1項ただし書・15項・16項)。
| 号 | 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物 |
|---|---|
| 1号 | 住宅 |
| 2号 | 住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの(=施行令130条の3の兼用住宅) |
| 3号 | 共同住宅、寄宿舎、下宿 |
| 4号 | 学校(大学・高等専門学校・専修学校・各種学校を除く)、図書館その他これらに類するもの |
| 5号 | 神社、寺院、教会その他これらに類するもの |
| 6号 | 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの |
| 7号 | 公衆浴場(個室付浴場業に係るものを除く) |
| 8号 | 診療所 |
| 9号 | 巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物 |
| 10号 | 1号から9号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く=施行令130条の5) |
この10種類の外側にある用途は、事務所も店舗も飲食店もホテルも出口がありません。唯一の抜け道が2号の兼用住宅で、施行令130条の3は延べ面積の2分の1以上を居住の用に供することと兼ねる用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えないことを両方求めます。兼ねられる用途も事務所、日用品販売店舗、食堂・喫茶店、理髪店・美容院、学習塾、アトリエなど同条の列挙に限られます。
10号のかっこ書も落とせません。附属していれば何でも建つわけではなく、施行令130条の5が次を除きます。附属の自動車車庫のうち、床面積の合計に同一敷地内の附属車庫の工作物の築造面積(築造面積が50㎡以下ならその値を減じた値)を加えた値が600㎡(同一敷地内の建築物(車庫の用途に供する部分を除く)の延べ面積の合計が600㎡以下ならその合計)を超えるもの、2階以上の部分にあるもの、床面積の合計が15㎡を超える畜舎、(と)項4号に掲げるもの(危険物の貯蔵・処理に供する建築物)です(公告対象区域内の附属車庫には同条2号の別枠があります)。
建ぺい率・容積率・高さ制限
| 項目 | 第一種低層住居専用地域 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建蔽率 | 30・40・50・60%のいずれか | 建築基準法53条1項1号 |
| 容積率 | 50・60・80・100・150・200%のいずれか | 同52条1項1号 |
| 前面道路による容積率 | 幅員12m未満のとき幅員(m)×4/10。道路が2以上あるときは最大の幅員で読む | 同52条2項柱書・1号 |
| 絶対高さ制限 | 10mまたは12m。都市計画で必ずどちらかが定められる | 同55条1項/都市計画法8条3項2号ロ |
| 外壁の後退距離 | 1.5mまたは1m。都市計画で定められた場合のみ | 建築基準法54条1項・2項 |
| 道路斜線 | かかる。勾配1.25、適用距離20m(容積率200%以下)。容積率の上限が200%なので実質固定 | 同56条1項1号・別表第3一の項 |
| 隣地斜線 | かからない(56条1項2号イ〜ニの列挙に低層住居専用地域がない) | 同56条1項2号 |
| 北側斜線 | かかる。真北方向の水平距離×1.25+5m | 同56条1項3号 |
| 日影規制 | 条例で指定された区域で軒の高さ7m超または地階を除く階数3以上が対象。測定面は平均地盤面から1.5m | 同56条の2第1項・別表第4一の項 |
絶対高さ・外壁後退・北側斜線がそろってかかるのは、低層住居専用の2地域と田園住居地域だけです。建蔽率の指定値には上乗せがあり、特定行政庁が指定する角地等で10分の1、防火地域内の耐火建築物等(準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等を含む)でさらに10分の1、両方に当たれば最大10分の2が加算されます(53条3項1号・2号)。60%が80%になる差なので、指定値だけで面積を出さないでください。限度10分の8の地域を対象とする3項1号のかっこ書と6項1号は、この区分には及びません。
外壁の後退距離は都市計画で定められた場合にだけかかります(54条1項)。定めのない第一種低層住居専用地域もあるため、まず指定の有無を見てください(同項には「政令で定める場合を除き」という留保もあります)。
絶対高さは10mか12mが必ず定められます(都市計画法8条3項2号ロ)。10mの地域にも緩和があり、敷地内に政令で定める空地を有し、敷地面積が1,500㎡以上で、特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものは12mになります(55条2項)。空地の割合は、建蔽率の最高限度が定められている場合「1から当該最高限度を減じた数値に10分の1を加えた数値」以上、1,500㎡は特定行政庁が規則で750㎡以上1,500㎡未満に別に定められます(施行令130条の10)。戸建区画では届かない、一定規模の開発向けの緩和です。なお1項・2項とも、55条4項の許可を受けた建築物には適用されません。
実際に効く高さは、絶対高さより北側斜線であることが多くなります。加算値は中高層住居専用地域の10mに対して5mで、真北側に寄せると10mまで積む前に頭が当たります。さらに高度地区が定められた区域ではその内容にも適合させる必要があり(58条1項)、高度地区は用途地域内であれば区分を問わず定められます(都市計画法9条18項)。絶対高さ10m/12mは、高度地区の内容までは担保しません。
他の用途地域との違い
隣り合う第二種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域に並べます。3区分とも許可列挙で、右へ行くほど列挙が増えます。
| 第一種低層住居専用 | 第二種低層住居専用 | 第一種中高層住居専用 | |
|---|---|---|---|
| 独立した店舗・飲食店 (その用途に供する部分の床面積の合計) | 不可(兼用住宅の枠のみ) | 150㎡以内((ろ)項2号) | 500㎡以内((は)項5号) |
| 大学・病院 | 不可 | 不可 | 可((は)項2号・3号) |
| 容積率 | 50〜200%(52条1項1号) | 同左 | 100〜500%(同項2号) |
| 絶対高さ | 10mまたは12m | 同左 | なし(55条1項の対象外) |
| 外壁の後退距離 | 1.5mまたは1m(定めがある場合) | 同左 | なし(54条1項の対象外) |
| 北側斜線 | 真北方向の距離×1.25+5m | 同左 | +10m(日影の条例指定区域を除く) |
| 隣地斜線 | かからない | かからない | かかる(立ち上がり20m・勾配1.25) |
| 日影規制の対象 | 軒高7m超または階数3以上 (測定面1.5m・別表第4一の項) | 同左 | 高さ10m超 (測定面4mまたは6.5m・同二の項) |
第二種低層住居専用地域との差は用途だけで、建蔽率も含め数値はすべて同じです。第一種中高層住居専用地域との差は逆に数値の側で、絶対高さと外壁後退が外れ、容積率の上限が上がり、北側斜線が緩みます。「低層」の名が外れると、規制の主役が用途の列挙から高さのコントロールに移ります。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。
調査で確認すること
用途地域は都市計画図で読み取れますが、そこで確定するのは区分の名前までです。次の順に潰します。
- 一種か二種か — 数値は同じで、独立店舗が成立するかが変わる
- 絶対高さが10mか12mか — 必ずどちらかが定められている(都市計画法8条3項2号ロ)
- 外壁の後退距離の指定の有無 — 定めのない地域もある(54条1項)。定めがあれば有効宅地が削られる
- 建蔽率・容積率の指定値と、角地等・防火地域・準防火地域の指定 — 53条3項で建蔽率に最大10分の2が加算される
- 前面道路の幅員 — 12m未満なら幅員(m)×4/10が指定容積率に重なる(52条2項1号)
- 敷地の真北方向 — 北側斜線は真北方向の水平距離で測る(56条1項3号)。同じ形の敷地でも向きで結果が変わる
- 条例と告示に当たる項目 — 日影規制の対象区域と号の指定、高度地区の高さの最高限度は都市計画図で確定しない。対象区域外にある高さ10m超の建築物でも、冬至日に対象区域内へ日影を落とせば対象とみなされる(56条の2第4項)
- 敷地が用途地域の境界にかかっていないか — 用途の制限は敷地の過半が属する地域の規定によるが(91条)、建蔽率・容積率・斜線・日影は同条の適用対象から除かれる
代表的な建物
建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります=48条1項ただし書)。×の理由はほぼすべて「(い)項に列挙されていない」ことです。「兼用住宅の枠」は延べ面積の2分の1以上が居住用、兼ねる用途の床面積の合計50㎡以内((い)項2号)を指します。
| 建物 | 可否 | 条件・根拠 |
|---|---|---|
| コンビニ | × | 独立店舗の号がない。兼用住宅の枠で日用品の販売を主たる目的とする店舗を兼ねる形のみ(施行令130条の3第2号) |
| スーパー・ドラッグストア | × | 同上。50㎡に収まらない |
| 飲食店 | × | 独立店舗は不可。兼用住宅の枠の食堂・喫茶店なら可(同第2号) |
| 事務所 | × | 独立の事務所の号がない。兼用住宅の枠なら可(同第1号。汚物運搬用自動車等のための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く) |
| ホテル・旅館 | × | 列挙がない |
| マンション(共同住宅) | ○ | (い)項3号(寄宿舎・下宿も同じ)。用途としての規模の上限はないが、容積率・絶対高さ・北側斜線が実際の上限になる |
| 戸建て住宅 | ○ | (い)項1号 |
| 保育所 | ○ | (い)項6号(老人ホーム・福祉ホームも同じ) |
| 小中学校 | ○ | (い)項4号(大学・高等専門学校・専修学校・各種学校は除かれる) |
| 病院・診療所 | △ | 診療所は○((い)項8号)、病院は×((い)項に号がなく、(は)項3号=第一種中高層から) |
| カラオケボックスなどの娯楽施設 | × | 列挙がない |
| パチンコ・スロットなどの遊技場 | × | 列挙がない |
| コインパーキング(単独の自動車車庫) | × | 単独の車庫の号がない。附属の車庫は(い)項10号だが施行令130条の5の枠内に限る(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず、用途制限の対象外) |
| 物流倉庫(倉庫業を営むもの) | × | 列挙がない |
| 工場 | × | 列挙がない。兼用住宅の枠で自家販売のための食品製造業を営むパン屋・米屋・豆腐屋・菓子屋等やアトリエ・工房を兼ねる形のみ(同第5号・7号。原動機を使用する場合は出力の合計0.75kW以下) |
参考(一次情報)
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)9条1項(定義)、9条2項・3項(対照)、8条3項2号ロ(低層住居専用2地域・田園住居地域について建蔽率・外壁の後退距離の限度・建築基準法55条1項の高さの限度を都市計画に定める事項)、8条3項2号ト・9条18項(高度地区)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)48条1項・15項・16項、52条1項1号・2号・2項柱書・2項1号、53条1項1号・3項1号2号・6項1号、54条1項・2項、55条1項・2項・4項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、58条1項、91条、別表第2(い)項・(ろ)項2号・(は)項2号3号5号、別表第3一の項、別表第4一の項・二の項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)130条の3((い)項2号の兼用住宅)、130条の5((い)項10号の附属建築物)、130条の10第1項・2項(55条2項の空地の割合と敷地面積の規模)
条文はe-Gov法令検索の現行条文を2026年9月1日時点で確認しました。建蔽率・容積率・絶対高さ・外壁の後退距離・日影規制の具体的な数値、高度地区・防火地域・角地等の指定の有無と内容は、都市計画および地方公共団体の条例で地域ごとに定められます。用途制限には48条1項ただし書の特例許可が、絶対高さ・外壁後退・斜線制限・日影規制には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。必ず当該自治体の都市計画図および条例をご確認ください。
WRITTEN BY
TRUSTART編集部
TRUSTART JOURNAL 編集部


