近隣商業地域は商業系3区分の入口です。建てられない建築物の列挙はわずか3つの号で、床面積の枠が一つも掛かりません。ただし商業地域では建てられるのにここでは建てられない用途が2つあります。
近隣商業地域とは
近隣商業地域とは、都市計画法9条9項に基づく用途地域のひとつで、近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するために定める地域です。商業地域(同条10項)が「主として商業その他の業務の利便を増進するため」とだけ書くのに対し、9項には「日用品の供給」という目的が書き込まれています。商業一般ではなく、住宅地に隣り合う商業です。
街の姿でいえば、駅前商店街や幹線道路沿いで、スーパーや飲食店と中層のマンションが同じ通りに並ぶエリアです。
建てられる建物・建てられない建物
建築基準法48条9項は「近隣商業地域内においては、別表第2(り)項に掲げる建築物は、建築してはならない」と定めます。禁止列挙なので列挙にない用途は原則として建てられ、列挙された用途も特例許可を受ければ例外があります(48条9項ただし書・15項・16項)。
| 号 | 近隣商業地域内に建築してはならない建築物 |
|---|---|
| 1号 | (ぬ)項=商業地域内に建築してはならない建築物をそのまま引用 |
| 2号 | 「キャバレー、料理店その他これらに類するもの」=キャバレー・料理店などの接待飲食施設 |
| 3号 | 「個室付浴場業に係る公衆浴場その他これに類する政令で定めるもの」 |
1号が引く(ぬ)項の中身は工場と危険物だけです。原動機を使用する工場は作業場の床面積の合計150㎡超が不可((ぬ)項2号。日刊新聞の印刷所と、作業場300㎡を超えない自動車修理工場は除く)。(ぬ)項3号と、1号が引く(る)項1号は業種を名指しした事業を営む工場を面積と無関係に禁じ、危険物の貯蔵・処理も政令で定めるものが不可です((ぬ)項4号・(る)項2号)。
裏返せば、店舗・事務所・ホテル・住宅・学校・病院・倉庫・遊技場に床面積の枠も階数の制限もありません。住居系の区分にある床面積の号が、(り)項にはないからです。
建ぺい率・容積率・高さ制限
| 項目 | 近隣商業地域 | 根拠(建築基準法) |
|---|---|---|
| 建蔽率 | 60・80%のいずれか | 53条1項3号 |
| 容積率 | 100・150・200・300・400・500%のいずれか(前面道路12m未満なら幅員(m)×6/10。指定区域は4/10・8/10) | 52条1項2号・2項3号 |
| 絶対高さ制限/外壁の後退距離 | どちらもなし(対象は低層住居専用2地域と田園住居地域のみ) | 55条1項・54条1項 |
| 道路斜線 | かかる。勾配1.5、適用距離は容積率400%以下20m・400%超25m | 56条1項1号・別表第3二の項 |
| 隣地斜線 | かかる。立ち上がり31m・勾配2.5 | 56条1項2号ロ |
| 北側斜線 | かからない(対象は低層住居専用2地域・田園住居地域・中高層住居専用2地域のみ) | 56条1項3号 |
| 日影規制 | かかる。条例指定区域で高さ10m超が対象。測定面は平均地盤面4mまたは6.5m | 56条の2第1項・別表第4三の項 |
建蔽率は60%と80%で防火地域の効き方が違います。80%指定の地域の防火地域内の耐火建築物等は制限そのものが適用されず(53条6項1号)、60%指定では10分の1(角地等と重ねて10分の2)の加算にとどまります(53条3項)。高さは北側斜線がない分、日影規制が主役です。容積率400%・500%の区域には高層住居誘導地区が定められることがあり、上限はVr=3Vc/(3-R)です(52条1項5号・令135条の14)。
他の用途地域との違い
| 準住居 | 近隣商業 | 商業 | |
|---|---|---|---|
| 非住宅用途の規模の枠 | 店舗・遊技場等は10,000㎡((と)項6号) | 枠なし | 枠なし |
| 原動機を使用する工場 | 作業場50㎡超は不可((と)項2号) | 作業場150㎡超は不可 | 同左((ぬ)項2号) |
| キャバレー・料理店などの接待飲食施設 | 不可 | 不可((り)項2号) | 可 |
| 個室付浴場業に係る公衆浴場 | 不可 | 不可((り)項3号) | 可 |
| 建蔽率 | 50・60・80% | 60・80% | 80% |
| 日影規制 | かかる | かかる | かからない(別表第4に列挙なし) |
準住居地域との差は規模の枠が外れ、工場の閾値が上がること。商業地域との差は(り)項2号・3号と建蔽率・日影規制です。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。
調査で確認すること
都市計画図で確定するのは区分の名前までです。次の順に潰します。
- 建蔽率が60%か80%か — 80%指定なら防火地域内の耐火建築物等で制限そのものが外れるが(53条6項1号)、60%指定では外れない
- 予定用途が(り)項2号・3号に当たらないか — 通常の飲食店は可。接待を伴うものは「料理店」に当たりうる
- 工場は面積と業種の両方を見る — 150㎡以下でも(ぬ)項3号・(る)項1号の名指し事業は不可
- 条例で決まる項目 — 日影規制の対象区域と号、高度地区の高さの最高限度。対象区域外でも冬至日に対象区域内へ日影を落とせば対象とみなされる(56条の2第4項)
- 敷地が境界にかかっていないか — 用途の制限は敷地の過半による(91条)が、建蔽率・容積率・斜線・日影は除かれる
代表的な建物
建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります)。(り)項は禁止列挙なので列挙にない用途は○。
| 建物 | 可否 | 条件・根拠 |
|---|---|---|
| コンビニ | ○ | (り)項に列挙なし。床面積・階数の制限なし |
| スーパー・ドラッグストア | ○ | 同上。規模の上限なし |
| 飲食店 | ○ | 同上(接待を伴うものは(り)項2号に当たりうる) |
| 事務所 | ○ | 同上 |
| ホテル・旅館 | ○ | 同上 |
| マンション(共同住宅) | ○ | 同上 |
| 戸建て住宅 | ○ | 同上 |
| 保育所 | ○ | 同上 |
| 小中学校 | ○ | 同上 |
| 病院・診療所 | ○ | 同上 |
| カラオケボックスなどの娯楽施設 | ○ | 同上。規模を問わず |
| パチンコ・スロットなどの遊技場 | ○ | 同上。準住居の10,000㎡の枠((と)項6号)も無い |
| コインパーキング(単独の自動車車庫) | ○ | 同上(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず、用途制限の対象外) |
| 物流倉庫(倉庫業を営むもの) | ○ | 同上 |
| 工場 | △ | 原動機を使用し作業場150㎡超は不可((ぬ)項2号。日刊新聞の印刷所と作業場300㎡以下の自動車修理工場は除外)。(ぬ)項3号・(る)項1号が業種で名指しする事業は面積を問わず不可 |
参考(一次情報)
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)9条9項(定義)、9条10項(対照)、9条17項(高層住居誘導地区)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)48条9項・15項・16項、52条1項2号・5号・2項3号、53条1項3号・3項・6項1号、54条1項、55条1項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、91条、別表第2(と)(り)(ぬ)(る)(を)の各項、別表第3二の項、別表第4三の項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)135条の14(高層住居誘導地区内の容積率の算出方法)
条文はe-Gov法令検索の現行条文を2026年9月2日時点で確認しました。建蔽率・容積率・日影規制の具体的な数値、斜線制限の緩和指定、高層住居誘導地区・高度地区・防火地域の指定の有無は、都市計画および地方公共団体の条例で地域ごとに定められます。用途制限には48条9項ただし書の特例許可が、斜線制限・日影規制には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。必ず当該自治体の都市計画図および条例をご確認ください。
WRITTEN BY
TRUSTART編集部
TRUSTART JOURNAL 編集部


