商業地域は、用途の制限が工場と危険物だけになる区分です。床面積の枠も階数の制限もありません。建蔽率は80%で選択の余地がなく、容積率は1,300%まで指定されえます。
商業地域とは
商業地域とは、都市計画法9条10項に基づく用途地域のひとつで、主として商業その他の業務の利便を増進するために定める地域です。近隣商業地域(同条9項)が「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため」と目的を書き込むのに対し、10項には供給する相手も品目も書かれていません。守るべき対象を挙げない代わりに、増進する利便が「商業その他の業務」だけに絞られている条文です。
街の姿でいえば、駅前や繁華街で、事務所ビルと店舗が建ち並び、その上層階に住宅が混じるエリアです。
建てられる建物・建てられない建物
建築基準法48条10項は「商業地域内においては、別表第2(ぬ)項に掲げる建築物は、建築してはならない」と定めます。禁止列挙なので列挙にない用途は原則として建てられ、列挙された用途も特例許可を受ければ例外があります(48条10項ただし書・15項・16項)。
| 号 | 商業地域内に建築してはならない建築物 |
|---|---|
| 1号 | (る)項1号・2号=準工業地域でも建てられない工場と危険物をそのまま引用 |
| 2号 | 原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が150㎡を超えるもの(日刊新聞の印刷所と、作業場の床面積の合計が300㎡を超えない自動車修理工場を除く) |
| 3号 | 業種を名指しした事業を営む工場(政令で定めるものを除く) |
| 4号 | 危険物の貯蔵・処理に供するもので政令で定めるもの(施行令130条の9が商業地域の欄で危険物ごとに数量を定める) |
禁じられているのは工場と危険物だけです。それ以外の用途には床面積の枠も階数の制限もありません。近隣商業地域の(り)項2号・3号にあたる号もなく、キャバレー、料理店その他これらに類するものも、個室付浴場業に係る公衆浴場その他これに類する政令で定めるものも建てられます。後者を建てられるのは13区分のうち商業地域だけです(他の12区分は(り)項3号・(る)項3号か、その引用で禁止)。
建ぺい率・容積率・高さ制限
| 項目 | 商業地域 | 根拠(建築基準法) |
|---|---|---|
| 建蔽率 | 80%。13区分で唯一、都市計画で選ぶ余地がない | 53条1項4号 |
| 容積率 | 200%から1,300%まで100%刻みの値のいずれか(前面道路12m未満なら幅員(m)×6/10。指定区域は4/10または8/10) | 52条1項3号・2項3号 |
| 絶対高さ制限/外壁の後退距離 | どちらもなし(対象は低層住居専用2地域と田園住居地域のみ) | 55条1項・54条1項 |
| 道路斜線/隣地斜線 | どちらもかかる。道路は勾配1.5・適用距離は容積率に応じ20〜50m、隣地は立ち上がり31m・勾配2.5 | 56条1項1号・2号ロ・別表第3二の項 |
| 北側斜線 | かからない(対象は低層住居専用2地域・田園住居地域・中高層住居専用2地域のみ) | 56条1項3号 |
| 日影規制 | かからない((い)欄に商業地域の列挙がなく、条例で対象区域に指定できない) | 56条の2第1項・別表第4 |
| 高層住居誘導地区 | 定められない(対象は住居系3地域・近隣商業・準工業のみ) | 52条1項5号 |
建蔽率80%は固定なので、防火地域の効き方が違います。防火地域内の耐火建築物等は、制限そのものが適用されません(53条6項1号)。いっぽう53条3項1号のかっこ書「十分の八とされている地域を除く」により防火地域を理由とする10分の1の加算はありませんが、かっこ書が掛かるのは防火地域の側だけで、準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等は加算を受けられます。角地等の加算(3項2号)も別に効きます。高さは日影規制がない分、斜線制限で決まります。
他の用途地域との違い
| 近隣商業 | 商業 | 準工業 | |
|---|---|---|---|
| キャバレー・料理店などの接待飲食施設 | 不可((り)項2号) | 可 | 可 |
| 個室付浴場業に係る公衆浴場 | 不可((り)項3号) | 可(13区分で唯一) | 不可((る)項3号) |
| 原動機を使用する工場 | 商業と同じ((り)項1号が(ぬ)項を引用) | 作業場150㎡超は不可((ぬ)項2号) | 面積による制限なし |
| 建蔽率/容積率 | 60・80%/100〜500% | 80%固定/200〜1300% | 50・60・80%/100〜500% |
| 日影規制 | かかる | かからない | かかる |
近隣商業地域との差は(り)項2号・3号と、建蔽率・容積率・日影規制。準工業地域とは工場の扱いが逆になり、用途は商業地域のほうが広い一方、原動機を使う工場は準工業地域のほうが自由です。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。
調査で確認すること
都市計画図で確定するのは区分の名前までです。次の順に潰します。
- 容積率の指定値 — 街区ごとに違う。前面道路12m未満なら幅員(m)×6/10が同時に掛かり、小さいほうが上限(52条2項)
- 防火地域か準防火地域か — 前者なら耐火建築物等で建蔽率の制限そのものが外れ(53条6項1号)、後者なら10分の1の加算(同3項1号)。角地等の指定(同項2号)も
- 工場は面積と業種の両方を見る — 150㎡以下でも(ぬ)項3号・(る)項1号の名指し事業は不可。危険物は施行令130条の9の商業地域欄の数量で判定
- 日影は自地域でなく隣を見る — 対象区域に指定できないが、冬至日に対象区域内へ日影を落とせば対象とみなされる(56条の2第4項)。高度地区の高さの最高限度も確認する
- 敷地が境界にかかっていないか — 用途の制限は敷地の過半による(91条)が、建蔽率・容積率・斜線は除かれる
代表的な建物
建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります)。(ぬ)項は禁止列挙なので列挙にない用途は○です。
| 建物 | 可否 | 条件・根拠 |
|---|---|---|
| コンビニ | ○ | (ぬ)項に列挙なし。床面積・階数の制限なし |
| スーパー・ドラッグストア | ○ | 同上。規模の上限なし |
| 飲食店 | ○ | 同上。接待を伴うものも(り)項2号が及ばず可 |
| 事務所 | ○ | 同上 |
| ホテル・旅館 | ○ | 同上 |
| マンション(共同住宅) | ○ | 同上 |
| 戸建て住宅 | ○ | 同上 |
| 保育所 | ○ | 同上 |
| 小中学校 | ○ | 同上 |
| 病院・診療所 | ○ | 同上 |
| カラオケボックスなどの娯楽施設 | ○ | 同上。規模を問わず |
| パチンコ・スロットなどの遊技場 | ○ | 同上。規模を問わず |
| コインパーキング(単独の自動車車庫) | ○ | 同上(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず、用途制限の対象外) |
| 物流倉庫(倉庫業を営むもの) | ○ | 同上 |
| 工場 | △ | 原動機を使用し作業場150㎡超は不可((ぬ)項2号。日刊新聞の印刷所と作業場300㎡以下の自動車修理工場は除外)。(ぬ)項3号・(る)項1号が業種で名指しする事業は面積を問わず不可 |
参考(一次情報)
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)9条10項(定義)、9条9項(対照)、9条17項(高層住居誘導地区)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)48条10項・15項・16項、52条1項3号・5号・2項3号、53条1項4号・3項・6項1号、54条1項、55条1項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、91条、別表第2(り)(ぬ)(る)の各項、別表第3二の項、別表第4
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)130条の9(危険物の貯蔵又は処理に供する建築物)
条文はe-Gov法令検索の現行条文を2026年9月2日時点で確認しました。容積率の数値、斜線制限の緩和指定、高度地区・防火地域・準防火地域の指定の有無は、都市計画および地方公共団体の条例で定められます。用途制限には48条10項ただし書の特例許可が、斜線制限には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。必ず当該自治体の都市計画図および条例をご確認ください。
WRITTEN BY
TRUSTART編集部
TRUSTART JOURNAL 編集部


