準住居地域は、住居系8区分で用途の縛りがいちばん緩い地域です。第二種住居地域では建たなかった物流倉庫が建ち、単独の自動車車庫に規模の制限が掛かりません。住居系で興行施設が建てられるのもこの地域だけです。
準住居地域とは
準住居地域とは、都市計画法9条7項に基づく用途地域のひとつで、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するために定める地域です。第一種住居地域(同条5項)や第二種住居地域(同条6項)が住居の環境だけを掲げるのに対し、7項には「道路の沿道」という立地と「業務の利便の増進」が入ります。住居系で建つ場所から性格が決まる唯一の区分です。
街の姿でいえば、幹線道路沿いに帯状に指定され、ロードサイドの店舗・自動車関連の施設・物流施設と住宅が並ぶ街です。
建てられる建物・建てられない建物
建築基準法48条7項は「準住居地域内においては、別表第2(と)項に掲げる建築物は、建築してはならない」と定めます。禁止列挙で、列挙にない用途は原則として建てられます。列挙された用途も特例許可があれば例外です(同項ただし書・15項・16項)。
| 号 | 準住居地域内に建築してはならない建築物 |
|---|---|
| 1号 | (り)項の全部を引用。接待飲食施設、個室付浴場業に係る公衆浴場、(り)項1号が引く(ぬ)(る)項の業種で名指しの工場・危険物 |
| 2号 | 原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡超のもの(作業場150㎡を超えない自動車修理工場を除く) |
| 3号 | メッキなど業種で名指しの事業を営む工場(特殊の方法による事業で政令で定めるものを除く=施行令130条の8の3) |
| 4号 | 危険物の貯蔵・処理で政令で定めるもの(施行令130条の9の表の「準住居地域」欄で読む) |
| 5号 | 劇場・映画館などのうち客席の部分の床面積の合計が200㎡以上のもの(ナイトクラブ等は用途に供する部分で200㎡以上) |
| 6号 | 前号のほか、店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所等でその用途に供する部分の床面積の合計が10,000㎡超のもの |
この区分を特徴づけるのは置かれていない号です。第二種住居地域の(へ)項にあった自動車車庫の号(300㎡超または3階以上)と倉庫業を営む倉庫の号が(と)項にはありません。2号のかっこ書と合わせ、沿道の自動車関連と物流を受け入れるのがこの区分の設計です。
建ぺい率・容積率・高さ制限
| 項目 | 準住居地域 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建蔽率 | 50・60・80%のいずれか | 建築基準法53条1項2号 |
| 容積率 | 100・150・200・300・400・500%のいずれか | 同52条1項2号 |
| 前面道路による容積率 | 幅員12m未満のとき幅員(m)×4/10(指定区域は6/10) | 同52条2項柱書・2号 |
| 絶対高さ制限 | なし(対象は低層住居専用2地域と田園住居地域のみ) | 同55条1項 |
| 外壁の後退距離 | なし(対象は同上) | 同54条1項 |
| 道路斜線 | かかる。勾配1.25、適用距離20〜35m | 同56条1項1号・別表第3一の項 |
| 隣地斜線 | かかる。立ち上がり20m・勾配1.25 | 同56条1項2号イ |
| 北側斜線 | かからない(対象は低層住居専用2地域・田園住居地域・中高層住居専用2地域) | 同56条1項3号 |
| 日影規制 | 条例指定区域で高さ10m超が対象。測定面は4mまたは6.5m | 同56条の2第1項・別表第4三の項 |
建蔽率の指定値には角地等で10分の1、防火地域内の耐火建築物等でさらに10分の1、両方なら最大10分の2が加算されます(53条3項)。80%指定の地域の防火地域内の耐火建築物等では制限自体が適用されません(53条6項1号は「限度が十分の八とされている地域に限る」)。高さは北側斜線がない分日影規制が主役です。高層住居誘導地区内は住宅部分が延べ面積の3分の2なら容積率の上限が施行令135条の14の式(Vr=3Vc/(3−R))で指定容積率の約1.286倍(400%なら約514%)になります。
他の用途地域との違い
| 第二種住居 | 準住居 | 近隣商業 | |
|---|---|---|---|
| 規模の枠が掛かる用途 (その用途に供する部分の床面積の合計) | (へ)項6号の名指しの用途に10,000㎡ | (と)項6号の名指しの用途に10,000㎡ | 枠なし |
| 興行施設(劇場・映画館など) | 規模を問わず不可((へ)項3号) | 客席の部分200㎡未満なら可((と)項5号) | 可 |
| 単独の自動車車庫 | 300㎡以下かつ3階以上にないもの((へ)項4号) | 車庫の号がなく面積・階数の制限なし | 同左 |
| 物流倉庫(倉庫業を営むもの) | 不可((へ)項5号) | 号がなく可 | 可 |
| 建蔽率 | 50・60・80% | 50・60・80% | 60・80% |
(と)項1号は近隣商業地域の禁止列挙である(り)項をそのまま引きます。準住居地域の制限は近隣商業地域の制限に2号〜6号を上乗せした構造です。第二種住居地域との差は数値ではなく用途で、興行施設・単独の自動車車庫・物流倉庫が可否を分けます。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。
調査で確認すること
用途地域は都市計画図で読めますが、確定するのは区分の名前までです。
- 予定用途が1号の引用先に入っていないか — 接待飲食施設、個室付浴場業に係る公衆浴場、危険物、業種で名指しの工場は(と)項に名前が出ないまま禁止される
- 工場は業種と作業場の面積の両方で見る — 2号は原動機使用で作業場50㎡超が不可(作業場150㎡を超えない自動車修理工場は除く)。3号の業種の名指しは面積を絞っても解決しない
- 面積の枠は5号と6号で別物 — 5号は興行施設を客席の部分200㎡以上で不可、6号は名指しされた用途に10,000㎡。事務所・宿泊施設に上限はない
- 建蔽率・容積率の指定値と防火地域・角地の指定。日影規制の対象区域と号、高度地区の高さの最高限度(58条1項)は条例と告示で決まる。対象区域外でも冬至日に対象区域内へ日影を落とせば対象(56条の2第4項)
- 敷地が境界にかかっていないか — 用途の制限は過半が属する地域による(91条)。ただし52条、53条、54条から56条の2まで、57条の2、57条の3、67条1項・2項ならびに別表第3は除かれ、過半では処理できない
代表的な建物
建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります)。面積はその用途に供する部分の床面積の合計です。(と)項6号の「遊技場」に条文上の定義はなく、国交省の一覧表が遊技場も娯楽施設も10,000㎡以下とするのは行政実務の取扱いです。
| 建物 | 可否 | 条件・根拠 |
|---|---|---|
| コンビニ | ○ | 店舗として(と)項6号の10,000㎡の枠内 |
| スーパー・ドラッグストア | △ | 同じく6号の枠内。10,000㎡超は不可 |
| 飲食店 | ○ | コンビニと同じ((と)項6号) |
| 事務所 | ○ | (と)項に列挙がなく上限なし |
| ホテル・旅館 | ○ | 同上(第一種住居地域の3,000㎡の枠外) |
| マンション(共同住宅) | ○ | (と)項に列挙なし |
| 戸建て住宅 | ○ | 同上 |
| 保育所 | ○ | 同上(老人ホーム・福祉ホームも同じ) |
| 小中学校 | ○ | 同上(大学・高等専門学校・専修学校も同じ) |
| 病院・診療所 | ○ | 同上 |
| カラオケボックスなどの娯楽施設 | △ | (と)項に名指しはないが国交省の一覧表は10,000㎡以下 |
| パチンコ・スロットなどの遊技場 | △ | (と)項6号の「遊技場」。一覧表も10,000㎡以下 |
| コインパーキング(単独の自動車車庫) | ○ | 車庫の号がなく面積・階数の制限なし(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず対象外) |
| 物流倉庫(倉庫業を営むもの) | ○ | (と)項に倉庫の号がない(倉庫業の登録がない自社倉庫は非該当) |
| 工場 | △ | 原動機使用で作業場50㎡超は不可((と)項2号)。作業場150㎡までの自動車修理工場は除く。業種の名指しは面積を問わない |
参考(一次情報)
- 都市計画法9条7項(定義)、9条5項・6項(対照)、9条17項(高層住居誘導地区)、8条3項2号ト(高度地区)
- 建築基準法48条7項・15項・16項、52条1項2号・5号・2項、53条1項2号・3項・6項1号、54条1項、55条1項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、58条1項、91条、別表第2(と)項と(と)項1号が引く(り)(ぬ)(る)の各項、(へ)項(対照)、別表第3一の項、別表第4三の項
- 建築基準法施行令130条の8の2第2項、130条の8の3、130条の9、130条の9の2、135条の14
- 用途地域内の建築物の用途制限(国土交通省都市局「土地利用計画制度」所収) — カラオケボックス等とマージャン屋・パチンコ屋等を準住居地域で10,000㎡以下と整理した行政実務上の取扱い
条文はe-Gov法令検索の現行条文を2026年9月2日時点で確認しました。建蔽率・容積率・日影規制の具体的な数値、斜線制限の緩和指定、高層住居誘導地区・高度地区・防火地域の指定の有無は、都市計画および地方公共団体の条例で地域ごとに定められます。用途制限には48条7項ただし書の特例許可が、斜線制限・日影規制には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。「遊技場」など個別用途の当てはめは特定行政庁の判断によります。必ず当該自治体の都市計画図および条例をご確認ください。
WRITTEN BY
TRUSTART編集部
TRUSTART JOURNAL 編集部


