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田園住居地域(でんえんじゅうきょちいき)

田園住居地域は、2018年に加わった13番目の用途地域で、住居系のなかでは低層住居専用の2地域と並ぶ厳しい区分です。低層住宅地であることは変わらないまま、農業に関わる用途が上乗せされます。建ぺい率は30〜60%、容積率は50〜200%で、絶対高さ・外壁後退・北側斜線がそろってかかります。定義と数値の骨格、区域内の農地にかかる許可、隣り合う2区分との違いを整理し、建物の名前で可否を引ける一覧を付けました。

調査・業務改善
公開: 2025/08/19更新: 2026/09/01
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不動産会社向け#不動産調査
田園住居地域

13区分のなかでこの地域だけ、建築基準法の数値をそろえても工程が確定しません。建てられる建物は第一種低層住居専用地域の列挙に農業関連の用途を足したものですが、区域内に農地が残っていると、造成にも建築にも都市計画法52条の許可が掛かります。

田園住居地域とは

田園住居地域とは、都市計画法9条8項に基づく用途地域のひとつで、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域です。第一種低層住居専用地域(同条1項)と第二種低層住居専用地域(同条2項)が守るのは「低層住宅に係る良好な住居の環境」だけで、8項だけがそこに「農業の利便」を並べます。意味は単純で、建築の列挙に農業関連の用途が入り、農地そのものにも規制が及ぶということです。

都市緑地法等の一部を改正する法律(平成29年法律第26号)による改正で新設され、2018年4月1日に施行されました。市街化区域内の農地を農地のまま都市計画に位置づける転換で、街の姿は戸建てと低層の共同住宅のあいだに畑や果樹園が残る住宅地になります。

建てられる建物・建てられない建物

建築基準法48条8項は「別表第2(ち)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない」と定めます。低層住居専用の2地域と同じ許可列挙で、列挙にない用途は規模を絞っても原則として建てられません。ただし特定行政庁が農業の利便および田園住居地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可すれば例外があります(同項ただし書・15項・16項)。

田園住居地域内に建築することができる建築物
1号(い)項1号から9号までに掲げるもの(=第一種低層住居専用地域と同じ。4号の学校からは大学・高等専門学校・専修学校・各種学校が除かれ8号は「診療所」で病院を含まない)
2号農産物の生産、集荷、処理または貯蔵に供するもの(政令で定めるものを除く)
3号農業の生産資材の貯蔵に供するもの
4号地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗その他の農業の利便を増進するために必要な店舗・飲食店等のうち政令で定めるもので、その用途に供する部分の床面積の合計が500㎡以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く)
5号4号のほか、店舗・飲食店等のうち政令で定めるもので、その用途に供する部分の床面積の合計が150㎡以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く)
6号1号から5号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く=施行令130条の5)

500㎡の枠は「地域の農産物」と結びついた3類型だけ

4号の「政令で定めるもの」は施行令130条の9の4の3つだけです。

認められるもの
1号田園住居地域およびその周辺の地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗(いわゆる直売所)
2号1号の農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とする飲食店(いわゆる農家レストラン)
3号自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(1号の農産物を原材料とする食品の製造・加工を主たる目的とするものに限る。作業場の床面積の合計50㎡以内、原動機を使用する場合は出力の合計0.75kW以下)

3つとも産地との結びつきが要件で、一般的なスーパーマーケットや飲食チェーンはこの枠では読めません。500㎡以内という枠そのものは第一種中高層住居専用地域の(は)項5号にもあり、この地域だけのものではありません。固有なのは産地で限定される点です。

5号の「政令で定めるもの」は施行令130条の5の2で、第二種低層住居専用地域と同じ5類型です(日用品の店舗・食堂・喫茶店/理髪店等のサービス業/洋服店・畳屋・自転車店等/自家販売のパン屋・米屋・豆腐屋・菓子屋等/学習塾等。後二者は作業場の床面積の合計50㎡以内、原動機を使用する場合は出力の合計0.75kW以下)。この5類型にも4号の3類型にも「事務所」は入っておらず、独立した事務所は規模を問わず不可。置けるのは(い)項2号の兼用住宅の枠内だけです(施行令130条の3。延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、兼ねる用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えないこと)。

2号からは施行令130条の9の3により農産物の乾燥その他の農産物の処理に供する建築物のうち著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものが除かれます。6号の附属建築物の除外(施行令130条の5)は低層住居専用2地域と共通。

建ぺい率・容積率・高さ制限

項目田園住居地域根拠
建蔽率30・40・50・60%のいずれか建築基準法53条1項1号
容積率50・60・80・100・150・200%のいずれか同52条1項1号
前面道路による容積率幅員12m未満のとき幅員(m)×4/10。道路が2以上あるときは最大の幅員で読む同52条2項柱書・1号
絶対高さ制限10mまたは12m。都市計画で定めるものとされている同55条1項/都市計画法8条3項2号ロ
外壁の後退距離1.5mまたは1m都市計画で定められた場合のみ建築基準法54条1項・2項
道路斜線かかる。勾配1.25、適用距離20m(容積率200%以下)同56条1項1号・別表第3一の項
隣地斜線かからない(56条1項2号イ〜ニの列挙に田園住居地域がない)同56条1項2号
北側斜線かかる。真北方向の水平距離×1.25+5m同56条1項3号
日影規制条例で指定された区域で軒の高さ7m超または地階を除く階数3以上が対象。測定面は平均地盤面から1.5m同56条の2第1項・別表第4一の項

数値の骨格は低層住居専用の2地域と同じです。建蔽率の指定値には上乗せがあり、特定行政庁が指定する角地等で10分の1、防火地域内の耐火建築物等(準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等を含む)でさらに10分の1、両方に当たれば最大10分の2が加算されます(53条3項1号・2号)。60%が80%になる差です。限度10分の8の地域を対象とする3項1号のかっこ書と6項1号は、この区分には及びません。

絶対高さは10mか12mのどちらかを都市計画で定めるものとされています(都市計画法8条3項2号ロ)。ただし定められることと、例外なく適用されることは別です。敷地の周囲に広い公園・広場・道路その他の空地を有する建築物と、学校その他その用途によってやむを得ない建築物で特定行政庁が許可したものには、55条1項・2項が適用されません(55条4項)。

10mと定められた地域には緩和もあります。敷地内に政令で定める空地を有し、敷地面積が政令で定める規模以上で、特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものは12mになります(55条2項)。空地の割合は、建蔽率の最高限度が定められている場合「1から当該最高限度を減じた数値に10分の1を加えた数値」以上、規模は1,500㎡(特定行政庁が規則で750㎡以上1,500㎡未満に別に定められます)です(施行令130条の10)。一定規模の開発でしか使えません。

外壁の後退距離は都市計画で定められた場合にだけかかります(54条1項。同項には「政令で定める場合を除き」という留保もあります)。定めのない地域もあるため指定の有無を先に見てください。さらに高度地区が定められた区域ではその内容にも適合させる必要があり(58条1項)、高度地区は用途地域内なら区分を問わず定められます(都市計画法9条18項)。絶対高さは高度地区の内容までは担保しません。

区域内の農地は造成も建築も市町村長の許可が要る

この区分を他の12区分から分ける規定です。都市計画法52条1項により、田園住居地域内の農地の区域内土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設、政令で定める物件の堆積(施行令36条の3=土石・廃棄物・再生資源)を行う者は市町村長の許可が要ります(建築確認とは別の手続)。

この許可に、規模を理由とする適用除外はありません。1項本文は面積の下限を置いておらず、除外は行為の種類(1項ただし書)と行為の主体(3項)で決まります。種類で外れるのは①通常の管理行為・軽易な行為その他で政令で定めるもの、②非常災害のため必要な応急措置、③都市計画事業の施行として行う行為またはこれに準ずる行為として政令で定める行為(施行令36条の5)。①の政令(施行令36条の4)は工作物(建築物以外のものをいう)で仮設のものの建設/法令等による義務の履行として行う工作物の建設・土地の形質の変更/現に農業を営む者が農業を営むために行う土地の形質の変更・物件の堆積の3つで、建築物の建築はどれにも含まれません。主体では国または地方公共団体が行う行為が外れます(52条3項。あらかじめ市町村長に協議)。

混同されやすい52条2項は、許可が不要になる規定ではなく、市町村長が許可をしなければならない場合を定めた規定です。対象は土地の形質の変更(1号)・建築物等の敷地(2号ロ)・堆積を行う土地(3号。飛散の防止の方法その他の事項に関する政令の要件に該当するものに限る)の規模が300㎡未満のもの等で、300㎡は施行令36条の6の数値。300㎡未満でも申請は要ります。なおこの許可は農地法の手続とも別で、同法4条1項7号により市街化区域内の農地の転用は農業委員会への届出で足りますが、市街化区域内なら52条の許可と届出の両方を通ります。

他の用途地域との違い

数値の骨格が同じ低層住居専用の2地域に並べます。3区分とも許可列挙です。

第一種低層住居専用第二種低層住居専用田園住居
独立した店舗・飲食店
(その用途に供する部分の床面積の合計。いずれも三階以上の部分をその用途に供するものを除く)
不可(兼用住宅の枠のみ)150㎡以内((ろ)項2号)150㎡以内((ち)項5号)。地域およびその周辺で生産された農産物と結びつくものは500㎡以内((ち)項4号)
農業関連の建築物
(生産・集荷・処理・貯蔵、生産資材の貯蔵)
不可不可((ち)項2号・3号)
数値の骨格
(建蔽率/容積率/絶対高さ/外壁の後退距離/北側斜線/隣地斜線/日影規制の対象)
3区分とも完全に同一。数値は前節の表のとおり
区域内の農地の造成・建築都市計画法52条の対象外対象外市町村長の許可(52条1項)

差は用途の列挙が農業側に伸びること建築基準法の外側に都市計画法52条の許可が乗ることの2つだけです。「農地が使えるようになった区分」ではなく、「農地を農地のまま残すために宅地化の側に手続を課した区分」と読むほうが実態に近くなります。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。

調査で確認すること

用途地域は都市計画図で読み取れますが、確定するのは区分の名前までです。次の順に潰します。

  1. 対象地に農地が含まれるか — 含まれるなら52条1項の許可が前提。登記記録の地目と現況の両方を見る
  2. 形質変更・敷地の規模が300㎡未満か — 未満なら市町村長は許可をしなければならない(52条2項)が、申請は省けない
  3. 市街化区域内か — 農地転用が届出で足りるか(農地法4条1項7号)、許可が要るかが変わる
  4. 予定業種と店舗の規模・階 — 500㎡・150㎡の枠はどちらも政令の類型に限られ、三階以上の部分をその用途に供するものは外れる
  5. 都市計画で指定された数値 — 絶対高さ(10mか12mか)、外壁の後退距離の指定の有無(定めのない地域もある=54条1項)、建蔽率・容積率の指定値、角地等・防火地域・準防火地域の指定(53条3項で最大10分の2が加算)、前面道路の幅員(12m未満なら幅員(m)×4/10が重なる)
  6. 条例・告示に当たる項目と敷地の真北方向 — 日影規制の対象区域と号の指定、高度地区の高さの最高限度は都市計画図で確定しない。対象区域外の高さ10m超の建築物でも、冬至日に対象区域内へ日影を落とせば対象とみなされる(56条の2第4項)。北側斜線は真北方向で測る(56条1項3号)
  7. 敷地が用途地域の境界にかかっていないか — 用途の制限は過半が属する地域の規定によるが(91条)、建蔽率・容積率・斜線・日影は同条の適用対象から除かれる

1〜3は市町村の農政・都市計画窓口に当たらないと固まりません。建築基準法側の数値を揃えても、農地が絡む限り52条の許可が工程のクリティカルパスです。

代表的な建物

建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります=48条8項ただし書)。×の理由はほぼすべて「(ち)項に列挙されていない」ことです。表中の「150㎡の枠」は(ち)項5号+施行令130条の5の2の5類型、「500㎡の枠」は(ち)項4号+施行令130条の9の4の3類型で、いずれもその用途に供する部分の床面積の合計で測り、三階以上の部分をその用途に供するものは枠から外れます

建物可否条件・根拠
コンビニ150㎡の枠(施行令130条の5の2第1号の日用品の販売を主たる目的とする店舗)。該当性は特定行政庁の判断
スーパー・ドラッグストア同上。150㎡を超えると枠から外れ不可
飲食店150㎡の枠(同第1号の食堂・喫茶店)
事務所×どの類型にもなく規模を問わず不可。兼用住宅の枠なら可(施行令130条の3第1号。汚物運搬用自動車等のための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く)
ホテル・旅館×列挙がない
マンション(共同住宅)(ち)項1号が引く(い)項3号(寄宿舎・下宿も同じ)。用途の上限はなく、容積率・絶対高さ・北側斜線が実際の上限
戸建て住宅(い)項1号
保育所(い)項6号(老人ホーム・福祉ホームも同じ)
小中学校(い)項4号(大学・高等専門学校・専修学校・各種学校は除かれる)
病院・診療所診療所は○((い)項8号)、病院は×
カラオケボックスなどの娯楽施設×列挙がない(5類型の学習塾等にも当たらない)
パチンコ・スロットなどの遊技場×列挙がない
コインパーキング(単独の自動車車庫)×単独の車庫の号がない。附属は(ち)項6号だが施行令130条の5の枠内(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず用途制限の対象外)
物流倉庫(倉庫業を営むもの)×列挙がない。農産物の貯蔵((ち)項2号)・農業の生産資材の貯蔵((ち)項3号)は別枠で可
工場×独立した工場の号がない。150㎡の枠の自家販売のパン屋・米屋・豆腐屋・菓子屋等や洋服店等(施行令130条の5の2第3号・4号)なら可(作業場の床面積の合計50㎡以内、原動機を使用する場合は出力の合計0.75kW以下)。農産物の処理・貯蔵は(ち)項2号(著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものを除く)
農産物直売所田園住居地域およびその周辺の地域で生産された農産物の販売が主たる目的のものに限り500㎡の枠(施行令130条の9の4第1号)。外れれば150㎡の枠
農家レストラン上記の農産物を材料とする料理の提供が主たる目的のものに限り500㎡の枠(同第2号)。ほかは150㎡の枠

参考(一次情報)

  • 都市計画法(昭和43年法律第100号)9条8項(定義)、9条1項・2項(対照)、8条3項2号ロ(建蔽率・外壁の後退距離の限度・建築基準法55条1項の高さの限度を都市計画に定める事項)、8条3項2号ト・9条18項(高度地区)、52条1項〜3項(田園住居地域内における建築等の規制)
  • 都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)36条の3(堆積の許可を要する物件)、36条の4(許可を要しない行為。1号かっこ書で「工作物」を建築物以外のものと定義)、36条の5(都市計画事業に準ずる行為)、36条の6(政令で定める規模=300㎡)
  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)48条8項・15項・16項、52条1項1号・2項柱書・2項1号、53条1項1号・3項1号2号・6項1号、54条1項・2項、55条1項・2項・4項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、58条1項、91条、別表第2(い)項・(ろ)項2号・(は)項5号・(ち)項・(と)項4号、別表第3一の項、別表第4一の項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)130条の3(兼用住宅)、130条の5((ち)項6号の附属建築物)、130条の5の2((ち)項5号)、130条の9の3((ち)項2号から除かれる建築物)、130条の9の4((ち)項4号)、130条の10第1項・2項(55条2項の空地の割合と敷地面積の規模)
  • 農地法(昭和27年法律第229号)4条1項柱書・同項7号(市街化区域内の農地の転用に係る農業委員会への届出)

施行日はe-Gov法令検索の都市計画法の改正履歴(平成29年法律第26号、施行日2018年4月1日)、条文は同検索の現行条文を2026年9月1日時点で確認しました。建蔽率・容積率・絶対高さ・外壁の後退距離・日影規制の具体的な数値、高度地区・防火地域・角地等の指定の有無と内容は、都市計画および地方公共団体の条例で地域ごとに定められます。用途制限には48条8項ただし書の特例許可が、絶対高さ・外壁後退・斜線制限・日影規制には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。必ず当該自治体の都市計画図および条例、ならびに市町村の農政窓口の運用をご確認ください。

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