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工業専用地域(こうぎょうせんようちいき)

工業専用地域は、工業系3区分のいちばん奥にあたる用途地域です。13区分のなかで唯一、住宅を建てられない区分で、工場の側には業種の制限も面積の制限も残りません。建ぺい率は30〜60%、容積率は100〜400%で、絶対高さ制限・北側斜線・日影規制はいずれもかかりません。定義と数値の骨格、隣り合う2区分との違い、調査で確認する順序を整理し、建物の名前で可否を引ける一覧を付けました。

調査・業務改善
公開: 2025/11/29更新: 2026/09/02
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不動産会社向け#不動産調査
工業専用地域

工業専用地域は、13区分のなかで唯一、住宅を建てられない区分です。工場の側には業種の制限も面積の制限も残らない代わりに、住宅と共同住宅、そして物品販売業を営む店舗と飲食店が、規模を問わず建てられなくなります

工業専用地域とは

工業専用地域とは、都市計画法9条13項に基づく用途地域のひとつで、工業の利便を増進するために定める地域です。工業地域(同条12項)が「主として工業の利便を増進するため」と書くのに対し、13項にこの一語は付きません。工業地域で住宅や店舗の入り込む余地を残していたのがこの語で、13項ではその余地が消えます。

街の姿でいえば、臨海部のコンビナートや大規模な工業団地で、働く場所はあっても住む人のいないエリアです。

建てられる建物・建てられない建物

建築基準法48条13項は「工業専用地域内においては、別表第2(わ)項に掲げる建築物は、建築してはならない」と定めます。禁止列挙なので列挙にない用途は原則として建てられ、列挙された用途も特例許可を受ければ例外があります(48条13項ただし書・15項・16項)。

工業専用地域内に建築してはならない建築物
1号(を)項に掲げるもの=工業地域の禁止(ホテル又は旅館、学校、病院など)をそのまま引き継ぐ
2号住宅
3号共同住宅、寄宿舎又は下宿
4号老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの
5号物品販売業を営む店舗又は飲食店(床面積の枠がありません)
6号図書館、博物館その他これらに類するもの
7号ボーリング場、スケート場、水泳場その他これらに類する政令で定める運動施設(=施行令130条の6の2のスキー場・ゴルフ練習場・バッティング練習場)
8号マージャン屋、ぱちんこ屋、射的場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの

構造は1号に出ます。(わ)項は工場に触れず、(を)項を丸ごと引いたうえで生活の側を足す形です。(を)項1号が引くのは(る)項3号だけなので工場は業種でも面積でも原動機でも制限されません(消防法などは用途地域とは別に適用されます)。

残るものと落ちるものの線は細かく引かれています。第一種低層住居専用地域の(い)項6号が「老人ホーム、保育所、福祉ホーム」と並べるのに対し4号は保育所を落とし、(を)項6号は「病院」だけで診療所を含みません

建ぺい率・容積率・高さ制限

項目工業専用地域根拠(建築基準法)
建蔽率30・40・50・60%のいずれか53条1項1号
容積率100・150・200・300・400%のいずれか(前面道路12m未満なら幅員(m)×6/10。指定区域は4/10または8/10)52条1項4号・2項3号
絶対高さ制限/外壁の後退距離/北側斜線いずれもかからない(前2つの対象は低層住居専用2地域と田園住居地域、北側斜線はこれに中高層住居専用2地域を加えた地域)55条1項・54条1項・56条1項3号
道路斜線/隣地斜線どちらもかかる(道路は勾配1.5、隣地は立ち上がり31m・勾配2.5)56条1項1号・2号ロ・別表第3三の項
日影規制かからない(別表第4(い)欄に掲げがありません)。ただし4項のみなし適用があります56条の2第1項・4項・別表第4
高層住居誘導地区定められない(対象は住居3地域と近隣商業・準工業)52条1項5号・都市計画法9条17項

建蔽率の号は低層住居専用2地域・中高層住居専用2地域・田園住居地域と同じ1号で、工業系で唯一30%まで下がります。80%の指定がないため、53条6項1号(制限そのものの不適用)は及ばない一方、3項1号のかっこ書「十分の八とされている地域を除く」にも当たらず、防火地域内の耐火建築物等も、準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等も10分の1の加算を受けられます。角地等(3項2号)と重ねれば10分の2です。

他の用途地域との違い

準工業地域と工業地域に並べます。

準工業工業工業専用
住宅/共同住宅・寄宿舎・下宿不可((わ)項2号・3号)
物品販売業を営む店舗/飲食店10,000㎡超が不可不可((わ)項5号)
事務所/診療所/保育所可(列挙なし)
図書館/運動施設/遊技場可(遊技場は10,000㎡以下)不可((わ)項6号〜8号)
建蔽率/容積率50・60・80%/100〜500%50・60%/100〜400%30〜60%/100〜400%

工業地域との差は工場ではなく暮らしの側にあります。工場の制限は工業地域の時点で外れきっており、(わ)項が足すのは人が集まる用途ばかりです。13区分の並びは用途地域13種類の比較で確認できます。

調査で確認すること

都市計画図で確定するのは区分の名前までです。

  1. 予定用途に住まいの要素がないか — 社宅は2号の「住宅」、寮・宿舎は3号の「寄宿舎」に当たる
  2. 店舗の中身が物販か飲食か — 5号は物販と飲食に限られ枠がない。それ以外の店舗は(を)項7号の10,000㎡で見る
  3. 建蔽率が30〜60%のどれか3項の加算は防火地域・準防火地域・角地等のいずれでも効く
  4. 容積率の指定値と前面道路12m未満なら幅員(m)×6/10と比べて小さいほうが上限(52条2項3号)
  5. 隣接する日影規制の対象区域 — 自地域は対象外でも高さ10m超で冬至日に対象区域内へ日影を落とせばみなし適用(56条の2第4項)
  6. 敷地が境界にかかっていないか — 用途は敷地の過半による(91条)。建蔽率・容積率・斜線は除かれる

代表的な建物

建物の名前で引ける一覧です。○=建てられる/△=規模や条件つき/×=建てられない(×も特例許可を受けた場合は例外があります)。(わ)項・(を)項の列挙にない用途は○です。

建物可否条件・根拠
コンビニ×(わ)項5号。床面積の枠がない
スーパー・ドラッグストア×同上
飲食店×同上
事務所列挙なし。(を)項7号にも挙がらず枠がない
ホテル・旅館×(を)項2号。規模を問わず不可
マンション(共同住宅)×(わ)項3号。寄宿舎・下宿も同じ
戸建て住宅×(わ)項2号。13区分でここだけ
保育所4号は老人ホーム・福祉ホームだけで保育所を掲げない
小中学校×(を)項5号。高校・大学・専修学校も含む
病院・診療所病院は(を)項6号で不可。診療所は列挙になく可
カラオケボックスなどの娯楽施設名指しなし。国交省の一覧表は10,000㎡以下と整理(行政実務の取扱い。条文上の定義ではない)
パチンコ・スロットなどの遊技場×(わ)項8号。工業地域と違い規模を問わず不可
コインパーキング(単独の自動車車庫)車庫の号がない(屋根も柱もない平面駐車場は建築物に当たらず対象外)
物流倉庫(倉庫業を営むもの)列挙なし
工場(を)項1号が引くのは(る)項3号だけ。業種・面積・原動機を問わず可

参考(一次情報)

  • 都市計画法(昭和43年法律第100号)9条13項(定義)、9条12項(対照)、9条17項(高層住居誘導地区)
  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)48条13項・15項・16項、52条1項4号・5号・2項3号、53条1項1号・3項・6項1号、54条1項、55条1項、56条1項1号〜3号、56条の2第1項・4項、91条、別表第2(い)(る)(を)(わ)の各項、別表第3三の項、別表第4
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)130条の6の2((わ)項7号の政令=スキー場、ゴルフ練習場及びバッティング練習場)
  • 用途地域内の建築物の用途制限(国土交通省都市局「土地利用計画制度」所収) — カラオケボックス等を工業専用地域で10,000㎡以下と整理した行政実務上の取扱い。条文上の定義ではありません

条文はe-Gov法令検索の現行条文を2026年9月2日時点で確認しました。建蔽率・容積率の具体的な数値、斜線制限の緩和指定、防火地域・準防火地域の指定の有無は、都市計画および地方公共団体の条例で定められます。用途制限には48条13項ただし書の特例許可が、斜線制限には特定行政庁の許可等による適用除外や緩和があります。必ず当該自治体の都市計画図および条例をご確認ください。

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